関西学院 同窓会報「母校通信」の対談「日本の防衛を考える」が物議

関西学院同窓会報「母校通信」の153号(2024年春号)に掲載された「日本の防衛を考える 防衛省・自衛隊で活躍された同窓生とともに」と題する対談が、同学院の関係者から批判を浴びている。

巻頭企画として収録されたこの対談には、同学院系列校を卒業した柏原敬子(大学社会学部)、髙橋憲一(中学部・高等部)、井上武史(中学部・高等部)の3氏が出席。同大学学長の森康俊氏が司会を務めており、リード文には「自衛隊の女性で初の空将補になり航空自衛隊で活躍された柏原敬子氏と防衛省で事務方トップの事務次官を務めてこられた髙橋憲一氏に、在学時や勤務時の貴重なお話をはじめ、日本の安全保障環境をどのように見られているか森康俊学長と法学部の井上武史教授が伺った」とある。

井上氏は「第二次世界大戦で国のために戦い亡くなった方たちがいてこそ、この令和の時代の平和や民主主義の社会が成り立っていると考えています。憲法学者や国民の中には自衛隊は憲法違反ではという声もありますが、有事になったら私たちは自衛隊を頼ることになります。そこにゆがみがあるように思う」と発言。

また同学院のスクールモットーである「Mastery for Service」について、「アメリカの若者の会話で〝Service〟というと〝Military Service〟、つまり兵役・軍務につくことを意味します。長く平和を享受してきた本学の学生は、〝Service〟にこの含意があることは気づきません」(森氏)、「関学の同窓生には公務員になった人は少ないのですが、若い人には興味があれば国防を始めとする様々なジャンルに是非チャレンジしてほしいと思っています。〝Mastery for Service〟(奉仕のための練達)の練達とは『艱難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を』生み出すものと教わりました。若い人たちには、チャレンジすることで新しく生まれる希望がきっと見つかると思います」(髙橋氏)、「卒業して航空自衛隊の仕事に就いてから〝Mastery for Service〟についてたびたび考える機会がありました。改めて素晴らしい名言だと思います。現役の学生はもちろん、卒業生になっても〝Mastery for Service〟を心に留めておいてもらえたら、きっと支えになることでしょう」(柏原氏)とのやり取りもある。

(左から)柏原、髙橋、森、井上の各氏

これについて、同大学神学部を卒業した牧師たちから「『奉仕のための練達』と訳された〝Service〟は礼拝という意味でもあり、決して『兵役・軍務につく』ことを意味するものではない」「世界市民を謳う関西学院の行ってきた教育と真逆」「平和学授業の努力も全て台無しにするような対談」「建学の精神の曲解の極地」などの意見が寄せられている。

同大学卒業で日本キリスト教協議会(NCC)議長を務める吉髙叶氏(日本バプテスト連盟市川八幡キリスト教会牧師)は自身のFacebookで、「産学共同ならぬ産軍学共同の実態がこのように露骨に表現されることに戦慄を覚えます。しかも近隣諸国の脅威を煽りながら。東アジアにおける日本の軍備強化そのものが平和への脅威の根源であることを度外視して」と非難。同窓会誌編集委員長である塚本恵美子氏の「見識と歴史認識」にも疑義を唱えている。

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