「法王」それとも「教皇」? 平林冬樹 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q.テレビや新聞のニュースではある時期まで「法王」と呼ばれていましたが、「教皇」とどちらが正しいのですか?(10代・女性)

日本では、ローマカトリック教会の最高権威者を「ローマ法王」「ローマ教皇」「法王」など、さまざまな呼称で表記します。結論から申し上げると、日本のカトリック教会は、「教皇」を正式呼称としています。

日本は国家としてのローマ教皇庁と、1947年に正式に国交を樹立しました。その時、外務省に登録される国家元首の称号の表記を「法王」としたため、現在でもこれが正式呼称になっています。

教会側は「教皇」を主張しましが、「皇」は天皇のみに留保される御字として使用が認められなかったとの説が有力です。仏教界の「法王」と性格が異なるため、日本のカトリック教会は、公式呼称を「教皇」に変更するよう政府に何度も求めました。しかし政府見解によれば、原語の呼称が変更されておらず、革命などによる政体の変化もないので、呼称変更は認められないとのことです。従ってマスメディアも、外務省の定めた表記に従い「法王」を使用しています。

なおカトリック教会の公用語であるラテン語では、教皇の公式呼称は、Summus Pontifex(最高位司教)です。また英語の Popeは、父を意味するラテン語のPapa に由来します。つまり欧米の名称には、「王」や「皇」のような貴族社会の王侯の意味合いはありません。この点、日本語の訳語には検討の余地があるかもしれませんね。

ちなみに「ローマ法王庁」は、国家としての日本語の正式名称ですが、ラテン語の国名は、Sancta Sedes、英語ではThe Holy See つまり「聖座」で、国際連合には、この国名で登録されています。バチカン市市国民のパスポートに表記される国名も「聖座」を意味するイタリア語の La Santa Sedeです。

ただし万国郵便連合の加盟国としての国名は、「バチカン市国」(Vatican City)を用いており、教皇庁が発行する切手の国名には、イタリア語でLa Citt? del Vaticano と記されています。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

ひらばやし・ふゆき 1951年フランス、パリ生まれ。イエズス会司祭。上智大学大学院神学研究科博士前期課程、教皇庁立グレゴリアーナ大学大学院教義神学専攻博士後期課程修了。教皇庁諸宗教対話評議会東アジア担当、(宗)カトリック中央協議会秘書室広報部長、 研究企画部長などを経て、日本カトリック司教協議会列聖推進委員会秘書、上智大学神学部非常勤講師。

【既刊】『教会では聞けない「21世紀」信仰問答Ⅱ -悩める牧師編』 上林順一郎監修

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