暗闇が世界を覆う時代 アドベントの希望に寄り添う

アドベント(待降節)は、キリスト教徒に約束とその実現までの時間を思い起こさせる。到着(Arrival)を意味するラテン語「Adventus」に由来するアドベントは、伝統的に典礼暦におけるクリスマスまでの4週間を指す。それは、イエス・キリストの誕生を祝うための希望に満ちた期待、準備、そして待望の時である。しかし、世界が容赦ない人権侵害、残虐行為、迫害を目の当たりにしている今、「地上の平和」の約束は遠く感じられる。私たちの現状について、アドベントはどのような示唆を与えてくれるのだろうか。「レリジョン・ニュース・サービス」への寄稿から紹介する。

人権擁護者たちは、約束が実現するまでの苦しい煉獄を経験している。人間の尊厳を擁護する革命的な基準や指標は達成されたが、それらはしばしば実現されない中での尊重となっている。確かに、迫害から人を守るための努力は、第二次世界大戦の惨禍以来、前例のない成果を上げてきた。実際、世界人権宣言が75年前に成立したことを記念して、12月10日は人権デーとなった。ホロコーストの灰の中から生まれた世界人権宣言は、個人を権利保持者として、国家をそれらの権利を守る義務者として認め、人々と政府との関係を再編成した。

しかし、この画期的な文書の成立以来、侵害は続いている。世界宣言とそれに続く条約が無価値だと言っているのではない。まったくの逆である。宣言とそれに続く人権条約は、各国政府の行動を測る普遍的な基準を確立した。国家は特定の行動をとることを約束し、これらの基準は、それが失敗したときの証拠となる。ピュー・リサーチ・センターによる気が滅入るほど膨大な報告書には、人類のほぼ3分の2が信仰の自由な実践を制限している国々で暮らしていることが記されているが、世界宣言はそのような失敗を測る基準を提供するものである。

しかし、これらの宣言がいかに重要であろうとも、抑圧者の手が弱者を打つのを止めることはできないし、ロシアの戦車を阻止したり、中国の強制労働収容所を閉鎖したりすることもできない。この暗黒の環境において、あらゆる信仰を持つ人も持たない人も、希望、平和、喜び、愛を強調するキャンドルに代表されるアドベントの動きに慰めと力を見出すことができるだろう。何世紀もの間、人々は、神がいつ人の形をとって出現するのか知らずに、メシアを待ち望んでいた。

アドベントは、その長い待望を思い起こさせる。そのリズムは、約束が成就する日を待ち望む楽観主義を促す。アドベントの季節は、人権擁護者が今最も必要としている明るい明日への希望を教えてくれる。

希望は暗い時代において最も重要である。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師は、殺害される数日前の1968年3月31日、最後の日曜日の説教で希望について語った。ワシントンD.C.の国立大聖堂の説教壇から、彼は黙示録21章を引用して説教した。「見よ、私は万物を新しくする;最初のものは過ぎ去った」

彼は、1960年代後半のアフリカ系アメリカ人が置かれた状況をオブラートに包んで言うことはなかった。公民権運動は平等な権利のために大きな勝利を収めたが、多くの課題が残っていた。「私たちには、正義と平和のための闘いには困難な日々が待ち受けているが、私は絶望の政治に屈するつもりはありません」キング牧師は言った。彼は「私は……という希望を持ち続けます」と直接述べた。「私たちは乗り越える、なぜなら道徳的宇宙の弧は長いですが、正義に向かって曲がっているから」彼はその日がいつ来るか知らず、1週間後に悲劇が起こる。

キング牧師は「この信念があれば、絶望の山から希望の石を切り出すことができるだろう」と締めくくった。

人権と信教の自由をめぐる情勢が世界的に暗転する中、私たちはキング牧師の知恵に寄り添い、絶望することなく希望にしがみつかなければならない。希望は、特にクリスマスの時期には力強い。聖歌「O Holy Night」は、「希望のスリル」を語り、「新しい輝かしい朝」の幕開けに 「疲弊した世界がいかに喜ぶか」を叫んでいる。キリスト者は、キリストの誕生によって長い間願っていた約束が成就したことを祝う。希望は、力が衰え始めた時に奮い立たせ、励ます。

私たちは「まだ見ぬ今」、夜明け前の暗闇の中にいる。私たちは何が正しいかを知っているが、間違ったことが起こり続けている。迫害の時代にあって、私たちは、より良い時代の到来を、希望をもって待ち望むというアドベントの教訓から学ぶべきである。アドベントの季節は、霊的な回復力の源となり、たとえ困難な時代であっても、明るい未来への希望があることを思い出させてくれる。

*筆者のノックス・テームズ氏は、オバマ政権とトランプ政権において、米国務省の宗教的マイノリティー担当特使を務めた。ペパーダイン大学シニアフェロー。本コメンタリーで述べられている見解は、必ずしも「レリジョン・ニュース・サービス」の見解を反映するものではない。

 






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