〝カルトと教会〟テーマに出版記念企画 「社会のゆがみに取り組むこと」

今年4月にキリスト新聞社から刊行された『脱会』(新装改訂版)と、6月に日本キリスト教団出版局から刊行された『わたしが「カルト」に?』の著者を招いた出版記念トークライブが10月14日、お茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)を会場に開催され、オンライン配信とあわせて約60人が参加した。

ほぼ同時期に出版された2冊だが、『脱会』は統一協会に入信したクリスチャンの女性が、最終的に著者の助けも借りながら脱会までこぎつけた歩みを記したもの。『わたしが「カルト」に?』は、元統一協会信者の竹迫之氏(日本基督教団白河教会牧師)と、元エホバの証人信者の齋藤篤氏(日本基督教団仙台宮城野教会牧師)による共著で、そもそもカルトとは何かという定義、その手口、支配構造、見極め方を解説したもの。誰もがカルト化する危険性を持っていることを指摘し、カルト問題を対岸の火事にすべきではないと警鐘を鳴らす。

会は、『脱会』著者の神保タミ子氏(日本イエス・キリスト教団荻窪栄光教会会員)、『わたしが「カルト」に?』共著者の竹迫氏による対話形式で行われた。司会は本紙編集長の松谷信司が務めた。

直近の解散命令請求について竹迫氏は、さまざまな意見があるが、「宗教(信教の自由)が少し不利な立場に立たされるとしても、放置されてきた統一協会の問題の大きさから見て、解散という判断は妥当」と述べる一方、たとえ解散したとしても、むしろここからが始まりで、宗教法人法と信教の自由の問題のみに矮小化せず、解決しなければいけないことは山積みだと指摘した。

神保氏も、まだほんの入り口に立っただけと指摘し、キリスト者として「終わりまで耐え忍ぶものは救われる(マタイによる福音書24章13節)」の聖句を引用しながら結果がどうであれ、今の自分ができることをしていきたいと決意を述べた。

神保氏による『脱会』の初版は2001年に出版。同じ教会の女性が統一協会に入信してしまい、日曜日の礼拝を最後に教会から除籍されるという話を直接聞いたことから、何かできることはないかとカウンセリングの専門家だった夫と共に、勉強を始めた経緯について紹介。当時、世間はカルト問題に対して無関心だったが、神保氏は無視できない大問題だと思ったと振り返る。

神保氏自身が当事者でも専門家でもなく、一般信徒として脱会の経緯に関わったという視点が本書の特徴として挙げられた。

竹迫氏は自らが経験した勧誘の手口や、入信のきっかけなどから、脅迫や情報統制などの手法を語った。脱会後、長年カルト問題に取り組んできたにもかかわらず周りの理解が得られなかったこと、元信者として統一協会に積年の思いなど感情的な葛藤もあったことを話した。

また、元信者として、宗教に裏切られ苦しみがあったにもかかわらず、今は牧師という立場でキリスト教界に留まっている理由にも触れ、常に統一協会と伝統的教会はどこに違いがあるかを考えてきたと打ち明けた。

後半では、宗教以外にもさまざまなカルト的団体があること。特定の価値観だけや、教科書だけを鵜呑みするような考え方、社会のありようもまたカルト問題であるとの意見が交わされた。

神保氏は、カルト問題の取り組みとして教育の重要性を指摘。そもそも「宗教=気持ち悪い」といった偏見があるとし、基礎的な宗教教育の必要性を説き、自身の考えを言語化できる主体性のある人間を育てる教育のあり方が必要だと訴えた。

竹迫氏は、教会がどうカルト問題に関わるかについて、まずカルトの実態を知り、受洗者数の有無だけではなく、平和を告知する働きであることを受け止めてほしいと呼び掛け、カルト問題に関わることは、この社会の流れのゆがみに取り組んでいくことでもあると締めくくった。

【新刊】 新装改訂版『脱会 今こそ知っておくべき統一協会の実像』 神保タミ子

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