NCC「処理水」海洋放出に厳重抗議 「地球といのちへの核攻撃に等しい」

日本キリスト教協議会(NCC、金性済総幹事、内藤新吾平和・核問題委員会委員長)は8月24日の「ALPS処理水」放出開始を受けて翌25日、「東京電力福島原発汚染水の海洋放出は取り返しのつかない過ちです!」と題する声明を発表した。

声明は、政府が「処理水」と呼ぶものは「汚染水」であるとし、海洋への放出を、「地球といのちへの核攻撃に等しい破壊的行為を意味」すると非難。「福島第一原発のトリチウム汚染水の海洋放出を断念することによって福島以上にはるかに大量の汚染水の海洋放出が必要となる青森県六ケ所再処理工場による海洋放出に影響をきたすと、政府は懸念しているのではないかと疑念を抱かざるを得ません」と指摘した。

さらに、トリチウムの危険性について十分に解明されていないこと、IAEA(国際原子力機関)でさえ「影響がゼロ」とは言わないことなどに触れ、「世界唯一の被爆国としての経験を持ちながら、さらに『核の平和利用』の美名のもとで作り上げた原発『安全神話』が12年前の東京電力福島原発事故によって完全に崩壊したにもかかわらず、今またその歴史から何の教訓も学ばず、人類の前に大罪を犯そうとしている」と警鐘を鳴らした。

声明の全文は以下の通り。


東京電力福島原発汚染水の海洋放出は取り返しのつかない過ちです!

 二年前、菅政権のもとで東京電力福島第一原発の溶解した核燃料デブリによってもたらされた125万トン以上のALPS処理水を、海洋放出することが閣議決定されました。それが遂に岸田政権の下で昨日、8月24日午後、汚染水の海洋放出が断行されました。

 わたしたちはこのことに断固抗議し、直ちにこの暴挙を中止することを要求します。

 処理水のトリチウム濃度を海水で薄めることにより、30年から40年にわたり太平洋に放出すると政府は説明しますが、ALPSで処理しても通常の原発排水とは違い原発事故後の汚染水であり、処理しきれず放出される放射性核種の種類も量も多く、どんなに希釈しても許される問題ではありません。ALPSはトリチウム以外の放射性核種を全量除去する設備ではないのです。そのような印象を与える政府は誠実ではありません。事実、2018年8月にそのことが明らかにされています。政府は「処理水」と呼びますが、それは「汚染水」です。福島でのALPS処理水の放出は、地球といのちへの核攻撃に等しい破壊的行為を意味します。むしろわたしたちは、福島第一原発のトリチウム汚染水の海洋放出を断念することによって福島以上にはるかに大量の汚染水の海洋放出が必要となる青森県六ケ所再処理工場による海洋放出に影響をきたすと、政府は懸念しているのではないかと疑念を抱かざるを得ません。

 また、トリチウムの人体や環境への影響についても、トリチウムが人の体内に長く蓄積されることなく排出される、との政府の説明には深い疑念を抱かずにおれません。放射性物質の体内被曝を研究する北海道がんセンターの西尾正道名誉院長は、トリチウムの危険性についてまだ十分に解明されておらず、人の体の中で「有機結合型トリチウム」へと変化するトリチウムが人体にきわめて深刻な内部被曝をもたらすことを警告してきました。IAEAのグロッシ事務局長は本年去る7月4日に東京電力福島原発のALPS処理水海洋放出に関する包括的報告書で、福島原発のALPS処理水海洋放出を、「国際的な安全基準に合致する……環境への放射線の影響は無視できるほどだ」と報告したことは全くの欺瞞であり、全く科学的根拠を欠いたものです。 ちなみにIAEAは、イギリスやフランスの再処理工場の排水まで健康影響を認めない原子力の推進機関です。そこでさえ、影響がゼロとは言わないのです。イギリスやフランスの再処理工場周辺の魚介類に放射能の生体濃縮が進んだように、今回の政府の所業は何年もかけて福島を中心とする周辺海域の生態系全体を汚染していくことになります。

 日本は、世界唯一の被爆国としての経験を持ちながら、さらに「核の平和利用」の美名のもとで作り上げた原発「安全神話」が12年前の東京電力福島原発事故によって完全に崩壊したにもかかわらず、今またその歴史から何の教訓も学ばず、人類の前に大罪を犯そうとしているのです。欺瞞的な説明をもって原発の利権構造を守りながらこの地球上のいのちと自然生態系を破滅的に破壊する政府の行為は、必ず取り返しのつかない結果を引き起こすことになります。

 わたしたちは、今一度、いのちと自然に対する畏敬と慈しみのこころを取り戻し、このいのちと地球環境に対する破滅的破壊行為を続ける貪欲文明の隷属から解放され、委ねられた被造物への持続可能な保全の責任を厳粛に負う道へ立ち帰ることを、勇気と英知をもって決断しなければなりません。

 わたしたちは、この地球といのちへの核攻撃に等しい、政府による放射性汚染水の海洋放出に断固抗議し反対します。

2023年8月25日

日本キリスト教協議会
総幹事 金性済
平和・核問題委員会委員長 内藤新吾

 






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