WCC中央委員会「朝鮮半島の和解と平和のための声明」 【この世界の片隅から】

世界教会協議会(WCC)中央委員会が6月26日、スイスのジュネーブ本部において、「停戦70年、朝鮮半島の和解と平和のための声明」を採択した。東アジアにおける緊張状態に対する和解と平和追求というテーマを含んでいる。昨今の日韓関係は、両国政府が歴史認識を歪曲しながら、経済活動を優先し、米国を指導者として日韓の軍事連携を歓迎する動きにある。つまり、朝鮮半島をめぐる軍事的緊張感は高まっていることを示している。

声明は、東アジアにおける平和を求め、また全世界における非核化を宣言している点において、先進的である。日本のキリスト教界においては、朝鮮半島に対する植民地の責任をどのように果たすかについてのさまざまな主題が含まれる声明であるため、翻訳文を抜粋して、ここに紹介したい。これからの日韓キリスト教関係、東アジアのキリスト者の連帯についての指針が、ここに示されている。

WCC中央委員会(6月21~27日、スイス・ジュネーブ)

停戦70年、朝鮮半島の和解と平和のための声明

世界教会協議会(WCC)中央委員会は、最近の韓日米連合軍事訓練、そして北朝鮮のミサイル実験などの軍事的対応の悪循環により、朝鮮半島内における戦争の危機がこれまで以上に高まっていることに深い懸念を表明します。私たちは、このような葛藤と緊張の連鎖を断ち切り、平和と対話の道に進むことを切望し、全世界の非核化のために心から祈っています。

朝鮮半島の地で緊張と対立の構図が再び増幅する今、私たちは、未だ正式に終戦が宣言されない中、今年は1953年の朝鮮戦争休戦から停戦70周年にあたる重大な時期を迎えているという事実を改めて記憶しています。

2019年にハノイで開催された米朝首脳会談が突然決裂して以来、南北関係は大きく弱体化してきました。2020年6月に北側が南北共同連絡事務所を撤去したことは、その代表的な例といえます。新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、国境が閉鎖され、南北政府、民間団体、市民社会、教会共同体間のコミュニケーションが完全に遮断され、このような状況で南北関係は、さらに悪化するほかありませんでした。

WCCは、40年近く南北のキリスト者間の出会いを準備し、朝鮮半島の平和と統一のための国際エキュメニカル連帯を支援してきました。しかし現在、国際社会の混乱の中で、2019年12月以降、朝鮮キリスト教連盟(Korea Christian Federation、KCF)との交わりが成立していません。このような暗い状況に直面して、私たちは朝鮮キリスト教連盟の姉妹と兄弟たちとの関係が回復され、分断された一民族の平和と統一のために、南北のキリスト者が主導するエキュメニカルな共同証言と連帯行動が再開されることを切に祈ります。

現在高まっている挑発と対立の連鎖を断ち切るためには、停戦協定から平和協定への大転換が急がれます。朝鮮戦争(1950~53年)の終戦を正式に宣言しなければならない重要な時期です。戦争が勃発してから70年、未だに停戦に陥っているということは、対立に陥る南北関係をより不安定にし、さらに現在の朝鮮半島の現実を考慮すると、建設的ではないともいえます。停戦協定から平和協定への転換は、韓国基督教教会協議会(NCCK)と朝鮮キリスト教連盟間の長年の信頼と約束であり、WCCもこれを全面的に支持しています(平和協定に対する私たちの意志は、第11回カールスルーエ総会で採択された朝鮮半島平和議定書と、WCCの「平和の光」プロジェクトに反映されたことを通じて確認することができます)。

したがって、私たち中央委員会は、朝鮮戦争に公式的な終戦を宣言し、1953年の停戦協定を平和協定に転換するための措置を早急に取ることを以下のように深く訴えます。

私たちは、WCCのすべての会員教会とエキュメニカル協力パートナー、特に1950~53年、朝鮮戦争に参戦した国の教会共同体が、各該当国政府と共に朝鮮半島の和解と平和協定を共同で支持することを要請します。

私たちは、米国、日本、韓国、北朝鮮政府が、地域の対立と緊張を高める挑発的な発言や軍事的行為を自粛し、緊張を緩和し、朝鮮半島の平和のための相互対話の環境を造成するための措置をとることを要請します。

私たちは、北朝鮮の核能力の高度化は依然として抑制されるべきですが、北朝鮮住民との民間交流と協力、政治的対話の大きな障害となっている対北朝鮮制裁「最大限の圧力」の緩和を強く勧告します。

私たちは、深い信頼と相互理解に基づき、朝鮮半島の平和と和解を早める重要な媒体として、WCC事務局が可能な限り緊急に、全世界のエキュメニカル共同体の代表者と共に、南北のキリスト者間の実質的な「民―民」の交流を早急に再開するよう要請します。

私たちは、WCCの会員教会とエキュメニカル協力パートナー、そして世界の善意あるすべての人々に、朝鮮半島の地で「平和をもたらすこと」(ルカ19:42、ローマ14:19)について省察し、NCCKが推進する「朝鮮半島終戦平和キャンペーン(Korea Peace Appeal)」を支持し、朝鮮半島平和統一共同祈祷主日に積極的に参加することを要請します。韓国教会と連帯し、地域と世界の恒久的な平和体制を築くための努力に全世界のエキュメニカル共同体が参加することを勧めます。また、私たちは、国連安保理常任理事国が朝鮮半島の和解と平和統一のために互いに協力することを祈ります。

 

松山健作
 まつやま・けんさく 1985年、大阪府生まれ。関西学院大学神学部卒、同大学院博士前期課程、韓国延世大学神学科博士課程(神学博士)、ウイリアムス神学館修了。現在、日本聖公会京都教区司祭、金沢聖ヨハネ教会牧師、聖ヨハネこども園園長、『キリスト教文化』(かんよう出版)編集長、明治学院大学非常勤講師など。

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