教会員名簿の受け渡しは違法? 大島有紀子 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q.住所や氏名が書かれた教会員名簿を教会外の第三者に贈与した場合、「個人情報保護法」に抵触しますか?(60代・教会役員)

個人情報とは、生存する個人に関する情報で、その情報の中にある氏名、生年月日などによって個人を識別できる情報を言います。教会員名簿は氏名と住所、電話番号とが対応するようにできていますので、それ自体個人情報と言えましょう。

他方で、個人情報保護法は、個人情報の第三者への提供禁止等一定の義務を課す対象を「個人情報取扱業者」に限定しており、個人情報データベース(個人情報の集積物)を業として取り扱う業者で、政令においてその数が過去6カ月間で多い時で5千人を超える場合とされています。そうすると、まず、日本の教会はこれに該当しないでしょう。さらに、宗教法人が宗教活動のために用いる場合も法は除外しています。

個人情報の保護が特に問題になるのは、電子計算機によって可能になった膨大な情報の集積と検索機能です。そういうことからすれば、単なる住所録は昔からあるもので、法が規制の対象として予定しているものとは言えません。

では、法律で規制の対象でなければいいでしようか。たとえ、規制の対象ではなくても、名簿上の人がキリスト教信仰を持っていることが分かるという意味では、人格と結びついた高度の個人情報とも言えますし、この住所録の情報が、他の情報と結び付けられデータベース上の個人データになる危険もあります。個人がその信仰を告白することは大切なことですが、それは、あくまで自らの意思によるべきものだと思います。また、公権力その他の巨大な権力がこれを集積することは個人の信仰の自由の侵害につながります。

少々大げさなことになってしまいましたが、たとえ住所録であっても、丸ごと第三者に提供することは、無償の贈与であれ、貸与であれ控えるべきであり、使用目的を確認して、必要な範囲で、その情報に係る個人の意思に反しないことを前提に信頼できる方への提供に限るべきものと思います。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

おおしま・ゆきこ 弁護士。1952年東京生まれ。72年受洗。中央大学法学部卒業。84年に千葉県弁護士会へ登録。渥美雅子法律事務所勤務を経て、89年に大島有紀子法律事務所主宰となり現在に至る。日本基督教団本所緑星教会員。

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