【異端・カルト110番】 統一協会脱会者牧師が「2世問題」に思うこと 竹迫 之(日本基督教団白河教会牧師)

 2世問題の顕在化は、インターネットの普及に連動している。わたしはこの15年ほど世たちからの相談を直接受けてきたが、その全てはわたしがホームページ上に公開しているわたし自身の統一協会からの脱会体験記を読んで、メールで相談してきた事例であった。ここ10年はSNSを通じて世同士の交流も盛んであり、時に対面による自助グループ的な集まりが催されることも多くなってきた。

2世信者が直面する悩み

 子どもの頃は「神の子」として大切に育てられることの多い統一協会2世たちは、しかし中高生に達する頃には多かれ少なかれインターネットにアクセスすることになる。世の親たちは「インターネットにはサタンの情報が溢れているからアクセスしてはならない」と禁じる例が多い。その禁を破る世たちは、それまで親に教え込まれるままに「統一協会は世界平和に貢献している」と信じているため、どれだけ統一協会が素晴らしい活動を展開しているのかを純粋に知りたくてアクセスする。ところがネット上には、統一協会に対する単なる罵詈雑言ばかりか、統一協会の活動の悪質さについての分析情報や、被害救済を訴える声などもたくさんある。「見てはいけないものを見てしまった」と後悔した世たちは、親にも言えない悩みを抱え込むことになる。

 中にはその葛藤を乗り越えて統一協会での生活を受容していく世たちもいるが、「そう言えば、自分も親から理不尽な要求をされてきたな」と思い当たる世たちも相当数いるのである。特に、親によって「合同結婚式」(統一協会内部では「祝福結婚式」と呼ばれる)に参加するために恋愛や異性との触れ合いそのものを禁じられてきた経験を持つ者が圧倒的に多いため、「自由恋愛」の描写を含むゲームやアニメ鑑賞などを禁じられて、友人たちが交わす会話に入れないため孤立する経験をしている者も多数に上るのである。

 ネットに書かれた情報は、本当にサタンによる悪意に満ちたものなのか。そういう思いにとらわれた世たちは、統一協会にとってネガティブな情報の精査に恐る恐る乗り出していき、やがて「ネットにある情報は嘘ばかりとは言えない」という確信にたどり着くのである。そうした世たちは、それまでの成育歴で感じてきた「違和感」や、これからの祝福結婚を始めとする統一協会での生活に対する「不安」などについて、外部にSOSを発信し始める。

SOSを受け止められない社会

 しかしそのSOSを適切に受信できる人はまだまだ少ない。担任教師やスクールカウンセラーなどに相談する世たちも多いが、背後に宗教カルトの問題があるというだけで尻込みし、「宗教の問題は家族で話し合って」などと説諭して終わりにしてしまう教師やカウンセラーが多いのが現状である。そうして誰にも相談できないまま、やがて両親を含む家族との「縮まらない距離」を感じながら育つ世当事者たちが激増することになる。

 多くの世たちは、「家族関係が大切だ」ということをきちんと理解しているし、客観的に言って親からの経済的庇護なしに生きていくことが出来ない現実も認識している。幼いころから「神の子」として大切に育てられてきており、「家族が一番大事」という価値観を内面化してもいるので、親に対する気遣いゆえに「世間の人々には、むしろ統一協会に対する悪印象を持つ人が多い」という自分なりの現実認識を告白できない。だからこそ、統一協会から距離を置くためには、そもそも統一協会の教説を頭から信じている家族(中でも親たち)の庇護から脱出しなければ不可能であるという辛い現実と向き合うことになる。最終的には「家出することを選択しなければならない」とまで思い詰める者が跡を絶たない。

 しかしかれらは、「家出」やその後の生活のための具体的な方法を知らない。意を決して警察や役所に相談する者もいるが、しかしそこにいる「大人」たちは概して「宗教問題」に対して及び腰であり、こと「家出」に関しては消極的であったり、むしろ反対したりする担当者の方が圧倒的に多い。その現実を目の当たりにし、そこで心が折れてしまう当事者たちは相当数に上ることが推察される。

東京都渋谷区松濤の統一協会(現・世界平和統家庭連合)本部

2世問題は福祉の課題

 それでも「家出」を強行する当事者たちを待ち受けているのは、買春を持ちかける者や人身取引業者たちがひしめく「闇の世界」しかないのである。良心的な団体もあるにはあるが、まだまだ数が絶対的に少なすぎる上、未成年者を保護すれば誘拐罪に問われかねないリスクさえある。世問題は「虐待の問題」であり、むしろ社会福祉の課題であって、宗教は基本的に関係ないが、「宗教的虐待」とも呼ぶべき現実は統一協会を筆頭に広がり続けている。救いを求める当事者は想像以上に存在している。「宗教的な虐待」の実態が周知されれば、「世たちの宗教に関わる悩みへのケア」を除いて、この問題は現行法だけでも十分にカバーできる。

 それでももし、制定の議論が始まっている日本版「反セクト(カルト)法」が実現できるのなら、支援の各分野における「カルト問題に精通した人材」の大規模な育成や、現状「手弁当」でこの問題にかかわっている人々に対する経済的なバックアップを要請したい、と強く願う。すでに法律が施行されているフランスにおいては、この問題への対処に国家予算が投じられていると聞く。もはやカルト問題は、犯罪の問題であると同時に「福祉の課題」であることが明白であって、民間に丸投げされている現状ではどうしても対処に限界がある。

成長する過程で相談できるように

 わたし自身が元統一協会員であり、脱会直後からもう40年近く統一協会問題に悩む家族の相談を受けてきた。当初は何としても合同結婚式への参加前に脱会を促すことを目標としていたが、すでに結婚してしまったり、あるいはマッチングされて結婚が間近になっている場合、逆に家族に対してはその結婚自体は否定せずむしろ祝福して、脱会そのものはあきらめてもらうように説得するようになった。教義のみに依拠する夫婦関係ならともかく、統一協会がきっかけの出会いであっても良き家庭を形成するに至る可能性が生じるからである。特に子ども(2世)の誕生が予測される場合、あるいはすでに誕生している場合、両親の脱会は子どもたちのアイデンティティにまで深刻な揺らぎをもたらす危険がある。結婚する本人たちが脱会を志向するようになれば話は別だが、いったん形成された家庭を壊すリスクを冒すことは許されない。

 子どもたちが成長する過程で統一協会からの締め付けや細かな禁止事項の多さに悩むような年頃になったときに、いつでも泣き言を語ったり逃げ道になったり相談したりできるような「良いおじいちゃん・おばあちゃんになる」ということを目指してもらうのである。そのためには、統一協会の動向に絶えず気を配り、信者らの心の動きについて熟知し、さらに他者の悩みを傾聴する技術を習得してもらう必要がある。はっきり言えば、脱会を目指すよりも重労働になることの方が多いし、孫たち(世)がある程度の年齢に達するまで健康な老後を過ごしてもらうことも大切であって、支援するわたしにとっても付き合いが数十年先まで及ぶことを覚悟することになる。しかし今のところ、2世に対する有効な支援の道はそれしかない。

老後に困窮する1世信者たち

 「世問題は福祉の課題である」という視点に立つならば、もう一つ見逃せない課題が浮上しつつある。長きにわたって金銭や労働力を搾取されてきた「世」たちが老齢期を迎えつつある今、かれら自身は老後の貯えどころか年金すら積んでこなかったために、世たちにその負担が大きくのしかかってくる可能性が高くなっている。多くの世たちがこのことを予感し、自身の将来について楽天的になれないでいる現状があり、すでに介護を必要としている世たちに対する手当ては、これまでもすべてのトラブルを信者らへの自己責任に転じてきた統一協会には全く期待できない。わたしたち民間の支援者たちも、とてもその必要に応え切れるものではない。

 統一協会に対する解散命令や、一足飛びの「反カルト法」の制定にまでは、わたし自身も全く期待はしていない。しかし、少なくとも経済的に救済されることを求める人々は続々と出現している。本来こういう事態に対処するための「国家」であるはずだとの思いは、刻々と募り続けている。(たけさこ・いたる)

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