「平和は可能、平和は義務」 カトリック司教協議会会長が談話 安倍元首相の銃撃でも

2022年の平和旬間にあたり、日本カトリック司教協議会の菊地功会長は7月7日、「平和は可能です。平和は義務です」と題する談話を発表した。

談話では、平和を「単に争いがない状況のことではなく、争いが起こりうる社会のさまざまな要因を取り除き、互いが支え合いながらいのちを生きる状況のこと」だとした上で、ロシアによるウクライナ侵攻により、世界は暴力によって平和を獲得することを肯定する感情に流されているが、それは真の平和を踏みにじることにしかならないと主張。戦争という大きな力の陰で多くのいのちの危機が忘れ去られていると述べ、「神から与えられたたまものであるいのちは、その始まりから終わりまで守られなくてはなりません」「連帯こそが平和を生み出すのだ」と呼び掛けた。

また、安倍晋三元首相が7月8日、奈良市で演説中に銃撃され死亡したことを受けて11日にも談話を発表。談話では、2019年の教皇フランシスコ訪日を実現するために安倍元首相が尽力したことを振り返り、「多くの人が自由のうちにいのちをより良く生きようとするとき、そこに立場の違いや考えの違い、生きる道の違いがあることは当然です。その違いを、力を持って、ましてや暴力を持って押さえ込むことは、誰にもゆるされません」と強調。「暴力が支配する社会ではなく、互いへの思いやりや支え合いといった神のあわれみの心が支配する社会が実現することを祈り行動したいと思います」と述べ、安倍元首相の永遠の安息を祈った。

全文は以下の通り。


2022年平和旬間 日本カトリック司教協議会会長談話 

平和は可能です。平和は義務です。

 平和が暴力的に踏みにじられた年になりました。いのちの尊厳がないがしろにされ、その保護が後回しにされる年になりました。
わたしたちは、2022年の平和旬間を、また新たないのちの危機の現実の中で迎えます。2年以上にわたる感染症の脅威の中で教皇フランシスコは、いのちを守り、その危機に立ち向かうには連帯が不可欠だと強調してきました。2020年9月2日には、この危機的状況から、以前よりよい状態で抜け出すには、「調和のうちに結ばれた多様性と連帯」が不可欠だと呼びかけています。

しかしながらこの半年の間、わたしたちの眼前で展開したのは、調和でも多様性でも連帯でもなく、対立と排除と暴虐でした。
感染症によるいのちの危機に直面する世界では、戦争こそしてはならないはずです。しかし、世界の指導者たちの考えは、わたしたちとは異なるようです。

ウクライナへのロシアの武力侵攻は、平和を求めてこれまで積み重ねてきた国際社会の努力を踏みにじる大国の暴力的行動として世界に大きな衝撃を与えました。そして、いのちを守り平和を希求する多くの人の願いを顧みることなく事態は展開しています。

感染症の状況の中で、わたしたちは互いに支え合うこと、互いのいのちを思いやること、つまり連帯して支え合うことこそが、いのちを守る最善の道であることを体験から学びました。平和とは、単に争いがない状況のことではなく、争いが起こりうる社会のさまざまな要因を取り除き、互いが支え合いながらいのちを生きる状況のことです。

しかし戦争によって暴力的にいのちを奪われる多くの存在に触れ、その理不尽さに心が打ちのめされるとき、わき上がる恐怖と怒りは、思いやりや支え合いを、感情の背後に追いやってしまいます。今世界は、暴力によって平和を獲得することを肯定する感情に流されています。しかしそれは、真の平和を踏みにじることにしかなりえません。

今年の復活祭メッセージで、教皇フランシスコはこう呼びかけました。

「どうか、戦争に慣れてしまわないでください。平和を希求することに積極的にかかわりましょう。バルコニーから、街角から、平和を叫びましょう。「平和を!」と。各国の指導者たちが、人々の平和への願いに耳を傾けてくれますように」(2022年4月17日)。

同時に、戦争という事実があまりにも大きい力をもっているため、その陰で、多くのいのちの危機が忘れ去られています。さまざまな理由から祖国を追われ避難の旅路にある人たち、経済状況からいのちをつなぐことが難しい人たち、政治や信条に対する迫害からいのちの危機に直面する人たち――。こうした、長年にわたって放置されている人間のいのちにかかわる課題も、世界には山積しています。わたしたちの周囲にも、法律の狭間で翻弄されながら助けを求めている人はいます。神から与えられたたまものであるいのちは、その始まりから終わりまで守られなくてはなりません。互いに支え合ってこの共通の家で生きるわたしたちは、「人間のいのちと、地球上のあらゆる形態のいのちを守ることが求められていることを認識し、エコロジカルな正義を推進するよう」求められています(ラウダート・シ目標2)。

平和旬間を迎え、わたしたちはさまざまな角度から平和について学び行動する時を与えられています。「すべての戦争は全人類に影響を与え、死別や難民の悲劇、経済危機や食糧危機に至るまで、さまざまな後遺症をもたらします」。そう述べたうえで教皇フランシスコは、復活祭メッセージを次のような呼びかけで締めくくっています。「兄弟姉妹の皆さん、キリストの平和において勝利を収めましょう。平和は可能です。平和は義務です。平和はすべての人が責任をもって第一に優先するべきものです」。

皆さん、この平和旬間に、暴力によらない平和は可能だと、連帯こそが平和を生み出すのだと、あらためて声を上げ行動しましょう。

2022年7月7日
日本カトリック司教協議会会長
カトリック東京大司教 菊地 功


日本カトリック司教協議会 会長談話

安倍晋三元総理大臣の逝去に際して

安倍晋三元総理大臣が銃撃され亡くなられたとのニュースを聞き、驚きと共に悲しみが湧き上がっています。安倍元総理大臣の永遠の安息をお祈りいたします。

いのちに対する暴力を働くことによって、自らの思いを遂げようとすることは、いのちを創造された神への挑戦です。神がいのちを与えられたと信じるキリスト者にとって、いのちはその始まりから終わりまで守られなくてはならない神からの尊厳ある賜物です。

すべてのいのちがもつ不可侵の尊厳と、あらゆる苦難の中にいる兄弟姉妹に、連帯と支援を示すことの大切さは、2019年11月25日、東京における日本政府および外交団との懇談において教皇フランシスコが語られたことでした。「すべてのいのちを守るため」というメッセージを伝えた教皇訪日を実現するために、安倍晋三元総理大臣はご尽力くださいました。

多くの人が自由のうちにいのちをより良く生きようとするとき、そこに立場の違いや考えの違い、生きる道の違いがあることは当然です。その違いを、力を持って、ましてや暴力を持って押さえ込むことは、誰にもゆるされません。今回の暴力的犯罪行為の動機はいずれ解明されるのでしょうが、暴力が支配する社会ではなく、互いへの思いやりや支え合いといった神のあわれみの心が支配する社会が実現することを祈り行動したいと思います。

あらためて、安倍晋三元総理大臣の永遠の安息を心からお祈り申し上げますとともに、ご家族の皆様の上に主からの深い慰めと平安がありますよう、お祈りいたします。

2022年7月11日
日本カトリック司教協議会会長
カトリック東京大司教 菊地 功

関連記事

この記事もおすすめ