【東アジアのリアル】 民の朝鮮半島平和協定宣言 松山健作 2020年12月25日

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アメリカ大統領選でジョー・バイデン氏が当選した。ドナルド・トランプ大統領が米朝首脳会談を実現した一方、今後新体制による米朝韓の関係に注目が集まるだろう。そして日本は、東アジアの平和構築にどのように貢献できるかも気がかりである。

半年前の7月24日のことである。韓国では、コロナ禍において宗教市民団体から「民の朝鮮半島平和協定宣言」が提案された。朝鮮半島では今年で朝鮮戦争勃発70年、停戦から67年を迎える年となっている。

この宣言は、韓国内の韓国基督教教会協議会(NCCK)と韓国YMCA全国連盟、平和と統一を切り開く人々など、七つの宗教市民団体が共同提案し、世界教会協議会(WCC)、国連NGO協議会など60団体余の国内外の団体の参与によって作成された。

緊張関係が続く朝鮮半島において、恒久的な平和を求めるため終戦宣言と平和協定を締結することが最も必要であると考えられている。これまでも「平和協定」については検討され提案されてきた。けれども、さまざまな宗教団体が手を取り合い、共同の宣言文を作成したのは、今回が初めてである。

またこの宣言の目標は、2023年朝鮮戦争停戦から70年目を前に平和協定の締結を実現することが目標となっている。

宗教市民団体は、朝鮮半島の平和協定の基本原則として以下、三つの事柄を提示している。「①朝鮮半島の平和協定は、停戦協定署名の当事者と交戦当事者である韓国、北朝鮮、中国、アメリカなど4つの国とする」「②協定する当事国はUN協定を遵守する」「③朝鮮半島における平和体制の構築と完全な非核化を同時的段階的に実現する」。

また宣言には、その他にも重要な内容を含んでいる。それは平和協定の発効と共に朝鮮戦争を完全に終息するという内容と合わせ、朝鮮半島の38度線は非武装地帯とし平和生態地帯に転換すること、北朝鮮とアメリカ間の国交正常化、南北間の軍備縮小共同委員会などの提案である。

韓国の宗教市民団体は、このような平和協定締結が民の力によって、動かされることを望んでいる。この「民」の中には、当然のことながら「日本」の「民」も東アジアという地域の構成員として招かれていることを忘れてはいけないだろう。

私たちはコロナ禍でクリスマスを迎えようとしている。クリスマスは、この世における平和の光の出現である。その光に導かれて、隣国と手を取り合う中で平和を実現する者として生きるようにされたいものである。

「平和を造る人々は、幸いである/その人たちは神の子と呼ばれる」(マタイ5:9)

松山 健作
 まつやま・けんさく 1985年、大阪生まれ。関西学院大学神学部卒業、同大学院博士前期課程、韓国延世大学神学科博士課程、ウイリアムス神学館修了。現在、日本聖公会京都教区聖光教会牧師、同幼稚園園長、『キリスト教文化』(かんよう出版)編集長、明治学院大学教養教育センター附属研究員など。専門は日韓キリスト教関係史。

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