横田滋さんの妻の早紀江さんら会見 「天国で待っていて。必ずめぐみちゃんを取り返すからね」

 

北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父親、横田滋さんが5日に87歳で亡くなったことを受けて、妻の早紀江さん(84)と長男の拓也さん(51)、次男の哲也さん(51)が9日午後4時から東京・永田町の衆院第1議員会館で記者会見を開いた。司会を「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」会長の西岡力さんが務めた。

横田早紀江さん

早紀江さんはまず、次のように滋さんの最期を紹介した。「何も思い残すことがないほど全身全霊を打ち込んで主人は頑張ったと思います。本当に安らかに、静かないい顔で天国に引き上げられましたことを私は本当によかったなと思っております」

亡くなる直前に滋さんにかけてあげた言葉を聞かれて、「お父さん、天国に行けるんだからね。新潟でお世話になったマクダニエル宣教師やロビンソン先生など、懐かしい方がみんな迎えて待っていてくれているんだよ。だから気持ちよく眠ってください。私が今度行く時は忘れないで待っていてね。これからも絶対に頑張るからね。大丈夫だから」と大きな声で言うと、右目の内側にうっすらと涙を浮かべて、それからすっと眠るように亡くなっていったという。

滋さんの人柄について質問されると、「朴訥(ぼくとつ)な人で、器用なほうではなかったんですけれども、そのような中で自分の全身全霊を打ち込んで、まっすぐに正直に、頑張れるところまでは頑張ろうという、ものすごい頑張りの強い人でしたので、病床でも絶対に愚痴も言わないし、弱音も吐かない、痛いとか苦しいとか言わない、本当に強い人だったなあと思います。いつも優しい笑顔で病院の方にも接していました。子どもが大好きで、本当に大事に大事にして、子どものことばっかり考えて、家族と一緒にいろんなところに旅行して、本当によいお父さんだったなあと思います」と答えた。

滋さんが最初、キリスト教に入信しなかったのは、「いちばん苦しいのは、北朝鮮にとらわれている娘だ。彼女が苦しんでいるのに、父である自分だけが宗教に頼って心の安定を得たら申し訳ない」という理由だったというエピソードに触れた質問には、こう答えた。

「たとえば旅行に行って鳥居があっても、お父さんは絶対鳥居をくぐらないと言って、いつも横から入っていくような頑固さを持っていたので、それは性格的なものだと思います。まだそこまで深い宗教的なことを考えなくても、自分の力で一生懸命頑張れば、どんなことでも克服できるんだっていう強い意志を持っていたんだと思います」

めぐみさんについて二人でどんな話をしていたかという質問に対しては、「あまりにも長い年月ですので、何も言わなくても、どちらも同じような考えでおりますので、あの人(北朝鮮の指導者)が心を変えてくれることだけを祈ろうねと私は話しておりました」。

そして、柩(ひつぎ)の中にはめぐみさんの写真を滋さんの胸のところに置いたのだと話した。病室にあって、いつも滋さんが見ていた写真の一つで、家族旅行で行った佐渡島で写したピンクのジャケットを着たものだ。そして、こう早紀江さんは語りかけたという。

「めぐみちゃんに会えなかったけれども、抱っこして行ってね。必ず取り返すからね」

雑賀 信行

雑賀 信行

カトリック八王子教会(東京都八王子市)会員。日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)で受洗。1965年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。90年代、いのちのことば社で「いのちのことば」「百万人の福音」の編集責任者を務め、新教出版社を経て、雜賀編集工房として独立。

この記事もおすすめ