病室で「俺の話を聞け!」はダメでしょう【聖書からよもやま話570】

主の御名をあがめます。
皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。

本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は  旧約聖書、ヨブ記の18章です。よろしくどうぞ。

ヨブ記 18章2節

いつになったら、あなたがたはその話にけりをつけるのか。
まず理解せよ。それから語り合おうではないか。
(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

神様から与えられてしまった「これでもか」というほどの苦しみに苦しんでいるヨブが、見舞いに来た3人の友人に自分の苦境を訴え、自分の正当性を訴えました。しかしそれに対して友人たちは「いやいや、君は正しくないからそんな目にあっているんだよ」と口々に言ったので、病人ヨブと友人3人でケンカみたいな状態になってしまいました。

いやいや・・・見舞いに来て病人に説教するなんて。病気で苦しむ人に「自業自得だよねー。暴飲暴食とかしてたんでしょ?」なんてわざわざ言いに見舞いに行く人がいるとしたら、その人は相当な意地悪です。そりゃケンカにもなります。見舞いというのは、病人が苦しむ「今」に寄り添うものであって、原因を探って「過去」を掘り返すものではありません。「君の今後のためを思って」・・・うるさい、それはせめて退院してから頼むよ。

3人のうちの1人、ビルダデはだんだんヒートアップしてきたヨブに対して「このままじゃいつまでたっても話に決着がつかない!いいからまず俺の話を聞け。話はそれからだ。」と言いました。まぁ要約すれば「俺の話を聞け!」です。

いますよね、こういう人。話し合いの場で「私がまず話を整理しますから、それからみなさん改めて議論をしてください」なんて言う人。それで本当に話が整理できれば良いのですが多くの場合、その人が言っていることは「俺の話を聞け!」であり、その「整理」は自分の主張に議論を導くための道標に過ぎなかったりしますし、時にはより議論がぐちゃぐちゃになることさえあります。

ビルダデの「俺の話」もまた、そんな困ったタイプの話でした。彼の話は「これまでの常識」に終始し、何の建設的な意見も含まれてはいませんでした。ヨブだって他の2人の友人だって「そんなことは言われなくても知っているよ」というものでした。

いますよね、こういう人。そこにいるみんなが知っていることを、さも自分の知識のように語って、議論をリードしている気分になっている人。これこそ時間の浪費ですし、日本の「長い会議」の根源の一つです。

・・・と、話がちょっと外れました。今日、僕が語りたいのは「長い会議あるある」ではありません。

ビルダデさん!そもそもそこは会議室ではなくて、病室なんですよ!!(厳密に言えばヨブの自宅であって現代でいう病室ではないのですけれども)病室に押しかけて、病人に「君の苦しみの原因を特定してみよう」とか語り出して、挙句の果てに「いいから俺の話を聞け!」とか、なんだかもう・・・。僕ならきっと「ありがとう。もう帰ってくれる?」と言います。そしてお腹の中で「二度と来るなこのやろー」と思います。

メディアやSNSで多くの人が「俺の話を聞け!」と言っています。それはそれで聞いてくれる人もいるのでしょうけれど、相手のTPOのことは考えているんでしょうか。多くの人がメディアやSNSに触れるのは会議室ではなく、茶の間や寝室です。特にクリスチャンの宣教活動をしている方に言いたいのは、あなたが福音を語る相手がいるのは、礼拝堂ではなくて茶の間や寝室ですよ、ということです。礼拝堂と同じ話を茶の間でするのなら、それは病室で「俺の話を聞け!」と言ったビルダデさんと同じことです。それはかえって相手の心を閉ざす行為です。あなたのSNSに礼拝堂で触れる人なんてほとんどいないんです。

会議室には会議室の、病室には病室の、礼拝堂には礼拝堂の、それぞれ適切な話し方があります。SNSは確かにどこででも触れられますが、会議室や礼拝堂で触れる人は少ないでしょう。そんなことをしていたら怒られてしまいますから。SNSに触れる人が多いのは先に挙げた茶の間や寝室、そして病室です。それに相応しい伝え方が、求められていると思います。

主にありて。

MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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