「裁判を受ける権利」は保証されなくては大変【聖書からよもやま話390】

主の御名をあがめます。

皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。
本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は旧約聖書、民数記の35章です。よろしくどうぞ。

 

民数記 35章11節

あなたがたは町々を定めて、自分たちのために逃れの町とし、誤って人を打ち殺してしまった殺人者がそこに逃れることができるようにしなければならない。
(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

殺人者が逃げ込むための町を作らなきゃいけないなんて、ずいぶん変わったことを神様は命ずるのだな、なんて思ってしまいますけども、よく読むと「誤って」殺してしまった人が逃げ込むための町と書いてあります。また、次の節を読むと「さばきのために会衆の前に立たないうちに死ぬことのないようにするためである」とも書かれています。つまりこれは、現代でいうところの「裁判を受ける権利」を保証するものであったということができるかと思います。

現代日本の刑法では仇討ちは認められていません。どんなに凶悪で身勝手な殺人者でも、裁判を受ける権利が保証されています。裁判を受けることなしに刑罰を受けることはありません。日本は先進国の中でもいまだに死刑制度が廃止されていない「遅れた」国であるという意見もありますが、たとえばアメリカでは死刑が廃止された州であっても、結果として凶悪犯が現場で警察官によって射殺されるケースは少なくありません。つまりこの場合、この犯人は裁判を受けずに刑を受けたことになります。その点、日本では凶悪犯でも現場で射殺されることは極めて稀なケースです。ほとんどすべての犯罪において、裁判を受ける権利が守られています。死刑制度存続の是非は傍に置きますが、この点は日本の法制度とその運用の立派な点かと思います。

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Image by Carrie Z from Pixabay

「裁判を受ける権利」というのは人権を守る上で非常に重要な権利です。どんな人も政府や権力者の一存で刑罰を受けることがないということですから。この権利が失われると、人権社会の実現は大きく遠ざかります。そしてこの権利は2500年以上も前の時代から、神様によって規定されていたんです。

ただ、聖書も少なくともこの箇所では「誤って」人を殺した人についてこの権利を保証していますが、「故意に」殺した人については保証していません。故意犯に対しては、一定のルールの上ではありますが、被害者や被害者遺族による仇討ちが認められていました。ただここでも昔から「故意犯」と「過失犯」を明確に区別しているのは興味深いなと思わされます。現代の法律の大切なエッセンスが聖書にはしっかりと刻み込まれているんです。

そして聖書の他の箇所も総合して読めば故意犯であっても私的な仇討ちや復讐は望ましいことではないとされています。基本的には犯罪者は裁判によって刑罰を定められるというシステムがすでにできあがっているんです。

現代の法律と、古代の律法。比べてみると人間の変わらない罪深さがわかります。

それではまた。

主にありて。
MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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