母親たちが必死で家庭と仕事を両立させようとしているこの時代、数字だけ見れば、米国の福音派の母親は子育てに満足しているようだ。ピュー研究所による宗教別調査によれば、幸福感が最も高いのは彼女たちだ。
子どもと過ごす時間の長さについて、白人の福音派の母親７６％が「ちょうどよい」と述べている。また半数以上が、「友人と交流する時間や趣味のための時間が十分持てている」と述べており、これは他のどの宗教の母親・父親よりも多い。それでもなお、全米の福音派の母親たちは、罪悪感や燃え尽き感、子育てのプレッシャーに苦しんでいるという。
教会にもよるが、「主婦として家にいて、ホームスクールで子どもを教育し、喜んで他のことよりも母親業を優先する」ことを期待されていると、母親たちは感じている。現在では、子どものいる家庭のおよそ半数（４６％）が共働きであるにもかかわらずだ（ピュー研究所調べ）。
子どものための伝道団体ライフウェイ・キッズのジャナ・マグルーダーは語る。「働く母親、特にクリスチャンの母親は罪悪感を抱いています。私たちは子どもを養い育てるよう創造されましたが、一方で、召しを受けて、または生活のために外で働いているからです。けれども、子育てと仕事は両立できます。外で働きながらも、信仰があつく、しっかりと子育てに取り組む母親であることは可能なのです」
しかし、外で働くことに関して良心の呵責（かしゃく）を覚えないクリスチャンの母親さえ、「子どものための時間を削ってまで自分の時間を捻出することはできない」と考えてしまいがちだ。教会で働きながら子育てしているミーガン・オールドフィールドは言う。「母親は『自分に死ぬ』ことと『自分をケアする』ことの板挟みになって罪悪感に苦しみます。けれども、よい母親であるためには、そのどちらも必要なことなのです」
白人の福音派の母親のうち６４％が、自分のアイデンティティーにとって母であることが「きわめて」大切、２８％が「とても」大切だと答えている（２０１５年調査）。
中西部ネブラスカ州在住のある母親はこう語る。「母としてのアイデンティティーをかけがえのない大切なものだと思うようになったのは教会の影響です。けれども、信仰と母であることを結びつけてしまうと、子どもの問題があったり、家族に喜んで仕えることができなかったりする時、つい『自分が霊的に不完全なせいだ』と考えてしまいます」。これこそがクリスチャンの母親の罪悪感だ。
女性やカップル対象のセラピストであり、フォーカス・オン・ザ・ファミリーの職員でもあるエリン・スマリーは言う。彼女自身、９歳から２４歳までの子どもを育てながら、母親にはあらゆる期待がかかることを経験してきた。
「外で働くクリスチャンの母親は、家事、ＰＴＡの仕事、子どもの霊の養いと、家庭でもたくさんの仕事を抱えています。クリスチャンの母親の肩には、仕事と家庭を両立するプレッシャーだけでなく、子どもの信仰教育という重圧まで加わるのです。神様は助けてくださいますが、それでも私たちは不安です」
白人の福音派の母親は、自分の子どもに将来、次のような大人になってほしいと望む傾向が他宗教の親より強い。「正直で倫理感の高い」（８８％）、「優しく思いやりがある」（８１％）、「勤勉な」（７５％）、「経済的に自立した」（６０％）、「高い志を持った」（５２％）
白人の福音派の母親の３４％は、「子育ては常に（または、ほとんど常に）たいへん」と答えており、これは全般的な親の割合とほとんど変わらない。約９割は、子育てはおおむね「やりがいがある」「楽しい」と考えている。
「教会は、信徒の母親たちが正直でいられ、弱さを見せられる場であるべきで、母性というものへの非現実的な要求をしてはならない」とスマリーは語る。オープンで母親を支える姿勢のある教会は、クリスチャン女性の母親としてのアイデンティティーによい影響を与える。ある母親はツイッターでこう発信している。「クリスチャンになって以来、母親であることに関して教会で嫌な思いをしたことがありません。私の教会のママたちは、お互いに余計な干渉をしませんし、私も新しく来る人に同じように接しています」
「自分はとてもよい親だ」と思う人の割合は、白人の福音派の母親の半数、父親の４２％、全体の母親では５３％だ。
スマリーは言う。「『子育て以上に素晴らしい仕事はない』などという嘘（うそ）を信じてはなりません。母親としてだけでなく、神様の子としての自分のアイデンティティーを問い直し、自分のために神様がお持ちになっているご計画についてよく考えてみましょう」
２０１８年５月１１日、ケイト・シェルナット
本記事は「クリスチャニティー・トゥデイ」（米国）より翻訳、転載しました。
