国会クリスマス晩餐会2018 中嶋常幸さん、スランプと祈りの中で見つけたもの

 

国会議員と共にクリスマスを祝う「国会クリスマス晩餐会2018」(主催:インターナショナルVIPクラブ)が11月26日、ホテル・ニューオータニ東京(東京都千代田区)で開催された。国会議員や各国大使、ビジネス・リーダーらが一同に集い、クリスマスを祝った。

中嶋常幸さん=26日、ホテル・ニューオータニ東京(東京都千代田区)で

メイン・スピーカーはプロ・ゴルファーの中嶋常幸(なかじま・つねゆき)さん。日本ゴルフ・ツアーでは通算48勝という歴代3位の記録を持つ。17年には、スポーツ功労者文部科学大臣顕彰を受けた。1980年に洗礼にあずかっている。

妻の律子さんとは21歳の時に出会い、「この人についていけば幸せになれる」と直感的に思ったという。ただ、中嶋さんは人の何倍も努力した人が勝てるという世界で育ち、一方、律子さんは18歳で洗礼を受け、毎週日曜には教会に行く人だった。

結婚してしばらく経った頃、中嶋さんはスランプに陥る。3年後ようやく優勝できた時、律子さんが、「お父さん、よかったわね。ずっと祈っていたのよ」と声をかけると、中嶋さんは、これまで一生懸命努力してきたことがすべて祈ることに持っていかれた気がして、「俺(おれ)は、お前が祈ったから勝てたのか。2度と祈るな」と言ってしまったという。

「そう言われた妻は、心を刀で刺されたように苦しかったと思います。なぜなら彼女は、僕のために祈る人生を送ってきたのに、『祈るな』と言われたわけですから。そこから彼女は苦しみました。祈らなくても、そこそこ成績を出し、そこそこ優勝もする。そのうち、祈らなくても勝てるんだと思い、彼女から信仰が消えていきました」

その後、また大きなスランプが中嶋さんを襲い、今度は7年間まるきり勝つことができなかった。しかし、この時、律子さんは中嶋さんのために祈ろうとしたが、祈ることができなかったという。

会場の様子=11月26日、ホテル・ニューオータニ東京(東京都千代田区)で

「スランプに入って5年経った頃、悩み続けた妻は、信仰に導いてくれた恩師のところに相談に行ったんです。そこで『悔い改めなさい』と言われて帰ってきました。でも、何か悔い改めるような悪いことをした覚えのない妻は、もう1度その恩師を訪ねることに。そこで、『神様のほうを向いていないことが罪なんだよ』と言われ、心が打ち砕かれ、再び信仰が回復されていきました。それから妻は教会に熱心に行き始め、聖書も勉強し、さらに障がい者施設を訪問するなど、人の手助けをするようになり、妻はどんどん元気になっていきました。そんな妻に、『お前は人を救えても、俺を救えない』と言ったりしていたのですから、どれだけひねくれていたのかと思います」

そんな中嶋さんに転機をもたらしたのは、遠征中に見たテレビのドキュメンタリー番組。それは愛知県に住む脳腫瘍(のうしゅよう)にかかった子どもを取り上げたものだった。

「『人間は生きているだけで素晴らしいんだ』とその子が語りかけてきたのです。僕はスランプの中で、『こんなに弱いままの自分は自分でない』と自己否定していました。しかし、その子の言葉を聞いて、『中嶋常幸は五体満足で、大好きなゴルフをお客さんの前でできている。成績がいいとか悪いとかの話ではない。俺はなんと傲慢(ごうまん)になっていたのか』と思ったのです。その瞬間にスランプが嫌でなくなりました。『スランプは、自分に気づきを与えてくれる先生なんだ。このスランプを乗り越えた先の新しい中嶋常幸に会ってみたい』と思えるようになったんですね。あの時、テレビを見たことは偶然ではなく必然です。神様が備えてくださったことだったと思っています」

律子さんは牧師になるために献身し、イスラエルのベテスダの池で按手礼(あんしゅれい)を受けた。中嶋さんはその時、これまでのいろいろなことが重なって涙がこぼれたという。

「今、中嶋常幸は、どんなにハンデをつけてもらっても松山英樹には勝てない。でも、人生はいくつになってもチャレンジだと思います。今、四十数人の子供を教えていて、その中には華やかにデビューしていく子もいるし、地道にプロへの道を上っていく子など、さまざまです。でも、子どもたちがゴルフを一生懸命やっていて、その手伝いをできることは楽しいことだし、自分にとってもチャレンジにもなっています。そういうこともすべて神様から整えられた道ではないかと思っています」

石破茂さん=11月26日、ホテル・ニューオータニ東京(東京都千代田区)で

同晩餐会の最後には、国会議員で自民党元幹事長の石破茂さんが挨拶(あいさつ)を述べた。石破さんは、新島襄の愛弟子である金森通倫を曽祖父に持つ4代目のクリスチャン。日本基督教団・鳥取教会の会員だ。

「今年は、『自分を迫害する者のために祈りなさい』(マタイ5:44)が本当に難しいことだと実感する1年でした」と胸の内を明かした。また、「ファリサイ派の人と徴税人」のたとえ(ルカ18:9〜14)を取り上げ、「自分だけが正しいと思っていないか」、「人を見下していないか」、「ファリサイ派の人のようになっていないか」といった思いにかられると語った。

「神様に喜んでいただくために自分は何をしたのか。喜んでもらえることを何もしていないのかもしれない。このように思う1年だった。来る年には、少しでも世の中がよくなりますよう、神様の御用のためにお用いいただければ本当に幸いなことです。自分が行き届かないところを心から恥じているところですが、共に祈れることを心から幸せに思います」

主催のインターナショナルVIPクラブ(市村和夫代表役員)は、「わたしの目には、あなたは高価で尊い」(イザヤ43:4、新改訳)という聖句に基づき、ビジネス・パーソンや専門職同士の交流の輪を広げ、相互理解を深めることを目的とした会員制のクラブ。

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