東京バプテスト神学校(坂元幸子校長、東京都文京区)の新年度の授業が8日から始まった。インターネットを利用したライブ授業も同時に行われ、遠隔地の受講生も授業に参加した。
教室は日本バプテスト連盟・茗荷谷(みょうがだに)キリスト教会内にあり、授業は午後6時半から8時半まで(土曜日は午前9時半から午後3時半まで)なので、働きながらでも学べる。
日本バプテスト連盟の教職者を養成する神学校には西南学院大学神学部(神学コース、福岡市)もあるが、東京バプテスト神学校は、東京地方バプテスト教会連合(のちに北関東連合と神奈川連合も加わる)が運営主体となり、信徒伝道者養成のための神学校として1962年に創立された。日本バプテスト連盟以外にも開かれており、講師や受講生も多様だ。久米小百合さんも同校の神学科を修了している。
同校では、遠方に住んでいるなど、通学が不可能な学生のために、録音テープなどを使った通信教育を早くから行っていた。しかし、ギリシア語など、動画でないと伝わらない授業に対応するため、授業の録画とインターネットでの放映を2009年に開始。翌年には、どこからでもリアルタイムで授業に参加できるよう、双方向インターネット通信によるライブ授業が始められた。もしライブ授業を欠席した場合でも、ホームページ(「通信受講」のカテゴリーにある「通信生のページ」)に掲載された授業の録画動画や資料を見てレポートを提出すれば出席が認められる。
新年度最初の科目は「ギリシャ語初級」。教室での受講生は7人で、一人は北海道札幌市の自宅からライブで受講した。講師の小牧由香さんが全員の出席をとった後、ホワイトボードにギリシア語のアルファベットを書きながら、書き方や発音を手ほどきする。ライブ受講生もモニター越しに講師の話を聞くが、次々に指名されて答えなくてはならないので、自宅にいても気を抜くことはできない。途中休憩があるが、スピーカーから教室の声は聞こえてくるので、疎外感を感じることもない。
さらに一昨年度から、連続公開講座「信徒のための神学養成講座」が前・後期で行われており、これは教会での共同受講(所属教会に集まってのライブ受講)もできる。参加費は一般(聴講生)3万円(本科生2万5000円)のところ、教会で共同受講した場合は半額の1万5000円だ。
その第1回目が12日に行われた。前期は「信徒のための聖書解釈学」で、マタイ福音書を1章から28章まで、イエスの行ったたとえや奇跡など、中心的な部分を全16回、聖書学的や正典論的、教会論的に読んでいく。授業は毎週金曜日だ。
講師は川口通治(かわぐち・みちはる)さん(篠崎キリスト教会牧師)、高木康俊(たかぎ・やすとし)さん(蓮根バプテスト教会牧師)、松村誠一(まつむら・せいいち)さん(品川バプテスト教会牧師)で、3人がそれぞれ5回ずつ担当し、最後の1回は、西南学院大学名誉教授の青野太潮(あおの・たしお)さんが新約学の研究者としての視点から総括する。
この日は、教室受講生13人、ライブ受講生4人、教会の共同受講者24人が学んだ。前半は講義で、後半はほとんどの時間を使ってディスカッションが行われた。参加教会は、相模中央キリスト教会、篠崎キリスト教会、浦和キリスト教会、西川口キリスト教会、前橋キリスト教会の5教会(すべて日本バプテスト連盟)。教室にいる人だけでなく、モニターを通して各教会の受講者やライブ受講生も一緒になって意見を活発に交わした。
講師の川口さんは次のように話す。
「通常、神学校は、教職者を育てるための学校と考えられていますが、本校は、一般信徒が学ぶことを積極的に考えています。ライブ授業はそのためのもので、札幌の人も福岡の人も、学びたい気持ちを妨げられることなく、神学生仲間と顔を合わせて一緒に学べます。また、教会で共同受講できる意味も大きいですね。教会に集まって同時に学べるのは、ライブ授業ならではです。中には、神学校の学びということで、ふだん教会に来ない人も、この時間帯なら教会にやって来る人もいます。新たな受講のかたちが神学校の新たな可能性を広げていくのではないでしょうか」
自宅からライブ授業に参加した受講生は、次のように感想を語った。
「リアルタイムで授業に参加できると緊張感があり、とてもいいと思いました。また質問もできるので、ありがたいです。集中できるよう、スピーカーの音量を大きくして参加するようにしています」
また、教室で受講している学生も、新たな刺激を受けているようだ。
「授業中、お一人お一人の顔が画面に出てくるので、違うところにいても、まるで一緒にいるような感覚があります。賛美歌学など、音楽関係の授業では一緒に賛美したりするのですが、タイムラグ(遅延)などなく、同時に歌えるのは驚きですね」
講師の小牧さんはもともと同校の神学生で、このライブ授業のシステムを低価格で立ち上げた。「神学を学びたいのに、今は時間的・地理的に難しい人が多い。そういう人たちのためにも、ぜひ、さまざまな神学校でもライブ授業を検討してほしい」