【インタビュー】「必要とされていない」と挫折した後、「愛されている」と歌えるように ゴスペル・シンガーのTiAさんに聞く(前編)

 

ニューヨークを拠点に活躍するゴスペル・シンガーのTiA(ティア)さん。デビュー15周年を記念して、7年半ぶりとなるオリジナル・アルバム「MIRACLE」を6月5日にソニー・ミュージックから発表したばかり。

TiAさんは2004年、16歳のとき、自身が作詞・作曲を手がけた「Every Time」でメジャー・デビュー。セカンド・シングル「流星」が人気アニメ「NARUTO」のエンディング曲に選ばれるなど、ヒットソングを連発し、ファースト・アルバムの「humming」は日本ゴールドディスク賞を受賞した。

デビュー10年目を迎えた14年、突然活動を休止して単身渡米し、ニューヨークのハーレムに拠点を移す。一度は歌うことをやめようと考えたが、ゴスペルに出会って歌う喜びを思い出し、ゴスペル・シンガーの道を歩み始めた。16年には米国最大級のゴスペルの祭典「マクドナルド・ゴスペル・フェスト」グループ部門で日本人として初優勝。昨年、オンライン雑誌「クーリエ・ジャポン」(講談社)の「世界が認めたジャパニーズ6人」に選ばれ、「ニューヨーク・タイムズ」紙にも特集されるなど、圧倒的なボーカル力と圧巻の表現力で、日本人ゴスペル・シンガーとして国内外から注目を集めている。

今回、一時帰国したTiAさんに話を聞くことができた。

──5年前にニューヨークへ生活の拠点を移されたのは、何か理由があったのでしょうか。

当時、とても苦しくて……。子どもの頃から歌うことが大好きで、歌手になる夢を叶(かな)えたはずだったのですが、「売れなきゃ」、「有名にならなきゃ」というプレッシャーを感じたり、「自分は歌うことが本当に好きなのか」、「何のために歌っているのか」と迷ったりするようになったんです。

ニューヨークを選んだ理由は自分でもよく分からなくて、ほかの国のパンフレットもいろいろ集めていたんですが……。幼い頃からパニック障害を抱えていて、一人で飛行機に乗ることも、一人で海外へ行くことも考えられなかったのですが、「とにかく遠いところに行きたい」という気持ちだけで決めてしまいました。

歌うことを止めるために行ったニューヨークでゴスペルに出会ったことは、いま思えば、神さまが導いてくださったとしか思えません。

──ニューヨークでは一切歌わずに?

初めの2カ月間は音楽から離れていたのですが、ニューヨークには音楽があふれているので、完全に離れることは難しかったんですね。あるとき、ライブハウスのオープン・マイク(観客が自由に飛び入り参加できる)に行って歌ってみたら、お客さんの歓声や一流のアーティストたちの演奏に感動しただけでなく、初めて自分を受け入れてもらったような感覚を覚えました。「歌手としてではなく、一人の人間としてもう一度歌ってみたいな」と思いました。

──ゴスペルとはどのように出会ったのですか。

ハーレムに借りたアパートの壁1枚挟んだ隣の部屋が教会だったんです。そのため、毎週日曜日はゴスペルの歌声で目覚め、それを聞きながらコーヒーを飲むという生活を送っていました。ハーレムといえばゴスペルの本場として有名ですが、家の目の前も斜め横も教会というような場所なんですよ。

日常的に耳にするゴスペルに興味を持つようにはなったのですが、クリスチャンではない私が教会に行ってもいいのか分からず、ずっと扉を叩けずにいました。

──教会に行ったきっかけは?

あるとき、日本で飼っていた愛犬が亡くなり、悲しくて、どうしようもなく落ち込み、部屋で一人で泣いていたら、いつものように隣からゴスペルが聞こえてきて……。その時にふと「行ってみよう」と思い立って、初めて教会へ行きました。

牧師さんは快く私を迎え入れてくれました。教会に入ると、「息あるものはこぞって主を賛美せよ。ハレルヤ」(詩編150:6)と筆で書かれた日本語の聖句が飾られていたんです。「なぜ日本語がここに」と尋ねたら、「大阪と島根に、僕が監修している教会があるんだよ」と教えてくれて。まさか隣の教会が日本と関わりがあるなんて思いもしなかったので、びっくりしました。(後編に続く)

 






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