日本カトリック正義と平和協議会(ウェイン・バーント会長)は3月11日、東京電力福島第一原子力発電所事故から14年を迎えることを受け、「神をたたえよ、造られたすべてのもののゆえに」と題する声明を発表した。
声明は、政府が2月18日に発表した「第7次エネルギー基本計画」の中で「福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて、エネルギー政策を進めていくことが、エネルギー政策の原点」と言及されているにもかかわらず、「あからさまな原発回帰へ向かおうとして」おり、「福島原発事故の重い経験はなかったも同然であり、事故前に比較しても著しい後退と言わざるをえ」ないと非難。
「核の災禍を経験し、核とはどのようなものかを他国に増して知っているはずの国」として、このような技術と「一刻も早く決別しなければ」ならないと訴えた。
声明の全文は以下の通り。
2011年3月11日東京電力福島第一原子力発電所事故から14年
「神をたたえよ、造られたすべてのもののゆえに」
2024年1月に発生した能登半島地震によって、北陸電力志賀原子力発電所の災害時避難対策の不備、福島第一原発事故が13年経っても教訓として生かされていなかったことが、明らかになりました。あれから1年が経ち、2月18日、政府は「第7次エネルギー基本計画」を発表しました。その本文は、次のような文言から始まります。
東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故からまもなく14年が経過するが、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて、エネルギー政策を進めていくことが、エネルギー政策の原点である。
ところがその内容は、原子力を再生可能エネルギーと並ぶクリーンなエネルギーであるとし、既存原子炉再稼働の加速、核燃料サイクルの推進、福島原発事故後に生じた「除去土壌」の再生利用や放射性廃棄物の地層処分の推進などが謳われ、政府があからさまな原発回帰へ向かおうとしていることは疑いようのない、驚くべきものでした。
そこには、2014年以来、エネルギー基本計画に示されてきた「可能な限り原発依存度を低減する」姿勢はもはや跡形もなく、原子力の「最大限活用」は既定事項とされています。
これでは福島原発事故の重い経験はなかったも同然であり、事故前に比較しても著しい後退と言わざるをえません。事故被害者の経験は蔑ろにされ、上掲した冒頭の文言は単なる形式にすぎなかったと判断する他ありません。
原発であれ、核兵器であれ、核の技術とは、生態系全体と人間の社会生活に取り返しのつかない大惨事をもたらす危険性と、人を恐怖によって支配する圧倒的な力を持ち、豊かなもの、強いものが貧しいもの、弱いものを搾取する構造上にのみ可能であり、そしてその使用によって不均衡は一層深刻なものとなる、不正義の技術に他なりません。2011年3月11日の福島原発事故以来、日本のカトリック教会は、以上のように訴え続けてまいりました。
日本は、第二次世界大戦において2度にわたり世界で初めての原爆による攻撃を受け、さらには冷戦下の太平洋核実験における被曝、福島第一原発事故による広域の放射能汚染と、今日考えうるあらゆる核の災禍を経験し、核とはどのようなものかを他国に増して知っているはずの国です。人類はこのような技術と一刻も早く決別しなければならず、日本こそ、そのために働く、特別な使命を担っているのです。
日本カトリック正義と平和協議会は、「第7次エネルギー基本計画」に反対し、真に原発事故の「経験、反省と教訓」に立脚したエネルギー政策への転換を求めます。地球温暖化が進み、国際情勢がかつてないほどに不安定な2025年、人類を含むすべての生命の尊厳が危機に陥っています。私たちは、今すぐ核の技術を手放し、いかなる分断の壁も乗り越えて一致し、生命の価値にこそ回帰しなければなりません。
Prot.no.SC-JP24-07
2025年3月11日
日本カトリック正義と平和協議会
会長 ウェイン・バーント
担当司教 エドガル・ガクタン
協議会一同