カトリックとプロテスタントと並ぶ3大教派の一つ、1054年の東西教会の分裂(大シスマ)で西方教会(カトリック)と分かれた東方正教会で大きな対立が起きている。
世界キリスト教情報(CJC)によると、ロシア正教会のモスクワ総主教キリル1世(72)は昨年12月30日、全世界の正教会で最も高い権威を持つコンスタンチノープル(現イスタンブール)総主教庁のエキュメニカル総主教バルトロメオス1世(78)に書簡を送り、「全正教会の最高指導者とはもはや認めない」と通告した。ロシア正教会は世界の正教会でも半数を占め、最大の信徒数を誇る。
コンスタンチノープル総主教庁が、ロシア正教会に次いで信徒数の多い(全世界の正教会の16%)ウクライナの正教会の独立を承認したことが発端。それまで3世紀にわたってウクライナの正教会を管轄下に置いてきたロシア正教会は激しく反発し、コンスタンチノープル総主教庁との交流断絶を表明していた。
そうした中、コンスタンチノープル総主教庁のエキュメニカル総主教バルトロメオス1世は昨日5日、ウクライナの正教会に「独立正教会」の地位を付与するという「トモス」(宗教上の決定文書)に署名し、ウクライナ正教会のトップであるエピファニー総主教に授与した。イスタンブールにあるコンスタンチノープル総主教庁で執り行われたその儀式には、ウクライナのポロシェンコ大統領とその家族も出席した。
ウクライナは、北東をロシアに接する東ヨーロッパの国。1686年、永遠平和条約によってロシアとポーランドがウクライナを分割し、東部はロシアに併合されるとともに、ウクライナの正教会はコンスタンチノープル総主教庁からモスクワ総主教庁に移された。1991年、ソ連崩壊に伴ってウクライナは独立。コンスタンチノープル総主教庁は10月、当時の文書の効力を取り消し、ウクライナの正教会を独立させる手続きが始まった。2014年にロシアがウクライナ南部クリミア半島を編入して以降、両国の関係は悪化している。