新型コロナ・ウイルスの感染拡大を受けて公開が延期されていた映画「赦(ゆる)しのちから」(アレックス・ケンドリック監督)が、19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開される。
高校のバスケットボール部のコーチ、ジョン・ハリソン(アレックス・ケンドリック、監督兼任)は、やりたくないクロスカントリー競走のコーチをするという貧乏くじを引くことになった。町の工場が閉鎖してしまい、その影響で多くの市民が町を去ったために、バスケットボール・チームが解散したからだ。業績主義のハリソンは、思ったとおりにならない自分自身を受け入れることができず、いつも愚痴や不満に満ちていた。
そんなクロスカントリー部に入ったのは、暗く塞(ふさ)ぎがちなハンナ(アリン・ライト=トンプソン)という女子生徒一人だけ。しかし、喘息(ぜんそく)を抱えながらも、必死で練習に打ち込み、大会優勝を目指すそのひたむきな姿を見て、ジョンも教えることへの情熱を取り戻していく。
物語が進むうちに、ハンナには両親がおらず、祖母に育てられていることが分かってくる。父親が家を出ていき、残された母親は心労で若くして亡くなってしまったのだ。そんなハンナはある日、いなくなった父親と再会する。そして、いよいよ大会当日……。
ジョンが、気が短くてどうしようもない自分を受け入れられるようになったのは「赦し」によってだった。そして、自分自身を見失いかけていたハンナを立ち上がらせ、走り続ける力を与えたのも「赦し」。ジョンは妻との祈りの中で、ハンナは学校で校長先生に聖書を教えてもらいながら徐々に心が溶かされていき、自分を取り戻し、「赦し」が与えられるのだ。
「赦す」とはどういうことなのか。自分の力だけで「赦す」ことができるのか。そうしたテーマがリアリティーをもって描かれ、キリスト教の中心的なメッセージである「和解」と「赦し」の大切さがストレートに伝わってくる。人間誰もが直面する問題だけに、クリスチャンでない人にはぜひ見てもらいたい映画だ。クリスチャンには、陸上の手ほどきをするハンナの父親の言葉が胸に突き刺さるだろう。
2015年に公開され、全米で興行収入80億円を超える大ヒットとなった「祈りのちから」の続編ともいえる作品。製作は同じくケンドリック兄弟で、兄のアレックスが監督・脚本・主演、弟のスティーヴンも共に脚本を手がけた。「祈りのちから」で主演を務めたプリシラ・シャイラーも校長役で出演している。
原題「Overcomer」は「(障害などを)克服した人」という意味で、聖書にある「(世に)勝つ者」(1ヨハネ5:5)から取られた。邦題が「赦しのちから」となったのは、映画で一貫して描かれている「赦し」のテーマと、前作の邦題に合わせたもの。
この映画の魅力の一つは、映像とともに流れるたくさんのワーシップ・ミュージックだ。特に、映画「ブレードランナー 2049」のサウンドトラック盤で「Almost Human」を歌ったクリスチャン・シンガーのローレン・デイグルが歌う挿入歌「You Say」は、感動的に映画を盛り上げている。
自分が愛されていることを知ったとき、赦すことができることを、ぜひこの映画で実感してほしい。
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