歴史学者が解説 「なぜキリスト教徒はトランプ大統領を歓迎するのか?」

アムステルダム自由大学で教壇に立つ歴史学者のバーン=ヤン・スプルイト氏は「なぜキリスト教徒はトランプ大統領を歓迎するのか?」と題するコラムを「CNEニュース」に寄稿した。

ドナルド・トランプ氏はアメリカを「癒やす」という発言を繰り返しており、彼自身「自らの使命を果たすために、神の特別な摂理により暗殺からも命を救われた」と述べている。

トランプ氏の言動やこれまで受けた有罪判決のニュースから、誰もが道徳的に優れた人間ではないと理解し、またこれまでの過激な発言から多くの人が「アメリカの民主主義のあり方に対する直接的な脅威として解釈している」。

スプルイト氏はここ数日、トランプ氏に投票した福音派のキリスト教徒が「私は鼻をつまみながら投票し、そのまま投票所を飛び出した」という話を本人から直接耳にしたという。実際、キリスト教徒の中で「トランプ氏を支持した」というより「カマラ・ハリス氏を支持しなかった」人々も一定数おり、そこにはハリス氏の多宗教的な背景や彼女の中心政策であった中絶容認、他にもパレスチナ人擁護や、イスラエルとハマスの紛争における二国家間解決を支持する見解に対する嫌悪感が考えられると指摘。

一方、トランプ氏は少なくともキリスト教的な価値観を政治的にも重要視する姿勢を強調している。例えば第一期就任中には連邦政府による中絶の権利を廃止し、それにより多くの州でより厳格な法律が導入された。またイスラエルについては無条件で支持する立場にあり、イランを中東紛争の背後に潜む悪として認識している。

スプルイト氏はまた、「彼が大統領在任中に、宗教の自由の危機はないだろう」とも言及。福音派をはじめとするキリスト教への支援と支持の姿勢は変わらなさそうだ。

結局のところキリスト教徒はトランプ氏の勝利を〝条件付き〟で喜び、分断された国家を癒やすという約束を果たすと期待しているのかもしれない。そこにあるのは純粋な信仰なのか、はたまた双方の思惑と駆け引きなのか。

バート=ヤン・スプルイト
歴史学者(ライデン大学博士、1994年)、ジャーナリスト。これまでReformatorisch Dagblad(1994~2002年)、Opinio(2006~2008年)、Elsevier(2008~2012年)にて講師を歴任。2013年9月からは、改革派神学校(アムステルダム自由大学)で教鞭をとる。2024年よりCNEにオピニオンエディターとして勤務。

(翻訳協力=福島慎太郎)

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