【MAROの教団・団体訪問記】新生宣教団──その1:マンガ・プロジェクト

 

主の御名をあがめます。

昨年の秋頃からこのクリスチャンプレスの企画会議で、クリスチャンのいろいろな教団や団体にお邪魔して、その「リーダー」の皆さんにお話を聞いてみよう、という話が持ち上がり、その「レポーター」として記事を書かせていただくことになりました MARO です。このような楽しく、かつ学びの多い企画に関わらせていただくことになったこと、クリスチャンプレスの皆様と神様の導きに感謝いたします。

1月からNHKの新しい大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」が始まりましたが、登場人物が非常にカラフルに描かれていることが話題になっています。「戦国時代にこんな色の布はなかったはずだ」という声もあれば、「カラフルであることで人物のキャラクターが分かりやすい」という声もあります。いわゆる「賛否両論」ということになっているようですが、僕個人としてはこの「カラフル大河」というコンセプト、とても好きですし、これからどんなドラマになっていくのか、楽しみです。

さて、大河と言えば「壮大な歴史」ですけれど、この意味においては、古今東西どこを探しても聖書に比肩するものは他にないのではないかと思います。そしてこの「史上最大の大河」は、「麒麟がくる」に15年も先駆けて実はすでに「カラフル大河」になっているんです。それが、今回お邪魔した新生宣教団さんが手がける「マンガ聖書」です。

ありがたいことに、この団体の「リーダー」岩岡稔員(いわおか・としかず)総主事にお話を聞けましたから、皆様にご報告しますね。

岩岡稔員総主事

「マンガだからこそ、読んでくれる人たちがいる」、「マンガだからこそ、分かる情景がある」。そんなマンガの力を宣教に使わない手はありませんし、そんなマンガの力の発信地として、日本ほどふさわしい場所はありません。

たしかに考古学的に考えれば、聖書の時代の人々がカラフルな衣装を着ていたとは考えられませんし、髪の色だって当時のイスラエルではほとんどの人が黒か茶色だったはずで、金髪の人はあまりいなかったでしょう。まして、青や緑の髪の人なんていません。

しかし、そんな指摘をするのは野暮(やぼ)というもの。マンガというメディアは、そんな「現実」をはるかに超越して、読む人にダイレクトに「イメージ」を提供するものですから、それでいいんです。それがいいんです。

「リアル」であることと「心に響く」ことは時として異なります。人って、カラフルなものが好きなんです。色彩のイメージは、人の心にダイレクトに響きます。

あらゆる生物の中で「色」を最もよく識別するのは人間なんだそうです。ですから「色」は、神様が人間に与えてくださった重要な賜物(たまもの)なんだとも言えます。その賜物に十二分に働きかけて聖書を伝えるというのは、とても大切なことだと思います。数年前の大河ドラマ「平清盛(たいらのきよもり)」は考古学的な時代考証に基づき、できるだけ現実に近い色合いを使ったところ、「映像が美しくない」と、あまり人気を得ることができなかったそうですし。

マンガ「聖書」全5巻

新生宣教団さんでは2006年、福音書部分にあたる「メサイア」を刊行し、その後、イエス・キリストの十字架と復活以降の使徒たちを描いた「メタモルフォシス」、創世記から出エジプト記の「ミューティニー」、出エジプトからダビデ・ソロモンの頃までを描いた「メレック」、預言者たちの言行をまとめた「メッセンジャーズ」と、聖書のほぼすべてのストーリーを全5巻のカラフルなマンガにまとめ、さらにダイジェスト化したマンガ小冊子「ザ・メサイア」や「マンガ・メインジャー」、「マンガ・スタディーガイド」なども制作されています。

これらのマンガ・シリーズは、日本語のみならず40近い言語(※1)に翻訳され、世界中のミッション・パートナーと多くの支援者の協力によって、教会学校はもちろん、内戦や貧困などにより学校に行けない子どもたちの道徳教育や宣教のために世界中で用いられているそうです。

これまでにキューバとプエルトリコに4万冊、タンザニアには5万冊、ウガンダでは140万冊、タイではなんと230万冊も配布されているそうです(※2)。このほか、ヨルダン、レバノン、トルコ、フィリピン、ベトナムなどでもマンガは配布され、英語圏の国々や、マンガが人気のフランス、オランダ、スペインなどでも親しまれています。

新生宣教団さんでは、現在ヒンディ語のマンガ・メサイア55万冊をインドに送り届けるプロジェクトを行っており、このプロジェクトへのご寄付を募っています。ヒンディ語の「マンガ・メサイア」「マンガ聖書」を1冊作るのにかかる費用は約250円。ですから、毎月3000円の寄付をいただければ、年に144冊のマンガを届けることができます。

この「マンガ」というメディアにおいて世界の最先端を突っ走るのが日本です。このプロジェクトは、日本にしかできない、日本にこそふさわしい宣教活動なんだといえます。世界で最もクリスチャン比率の低い国といわれる日本ですが、神様が「マンガ」という日本の文化を用いて働いてくださるのはとても嬉しいことです。

今回、新生宣教団さんの印刷所も見学させていただきましたが、入り口を入ってすぐに巨大な印刷機がぐるぐる回って、この鮮やかな「マンガ聖書」が次々に印刷されていました。そこは日本最大のミッション系印刷所といえる場所でした。実はこの印刷所が刷っているのは「マンガ聖書」だけではありません。そこにはもう一つ、大きなミッションがあるんです。が、それは次回にお話しすることにして、今日の報告はここまで。

それではまたいずれ。

主にありて。MARO でした。

(※1)2020年3月現在。

(※2)すべてマンガ小冊子を含む概数です。

横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

この記事もおすすめ