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何年かに一人、私の姿を見て「神様」と呼ぶ保育園児が現れる。どの子も3才前後だと記憶しているが、3才から毎週行なわれる幼児礼拝に出席するようになると、数か月後には「神様」と呼ばなくなる。専門的なことは分からないが、知識や経験が増えることで、逆に「見えない存在」に気付き始めるからではないかと思っている。人間の知識も経験も、人間そのものが「限りある存在―有限」であることを指し示してくれるからだ。「主を畏(おそ)れることは知恵の初め」(箴言1:7)とあるのは、「有限の存在」である私が、「無限の存在」である神に気付くことこそが本当の知恵だと教えてくれている。
1月21日、日本の新しい基幹ロケットとなることを目指して開発されているH3ロケットの打ち上げが延期された。岡田匡史(おかだまさし)プロジェクトマネージャーは、「エンジンには魔物が棲んでいるとおっしゃってましたが?」という記者の質問に、「魔物ではなく神様が棲んでいると思っている、『お前たちしっかりしろよ』と言われているのだと思う。」と応えておられた。(1月21日テレビ朝日報道ステーションより)H3ロケットは2012年から本格的に開始された宇宙基本計画である。2019年の報告書には、目的は「宇宙基本計画に掲げられている、『我が国の基幹ロケット(国内に保持し輸送システムの自律性を確保するための輸送システム)の産業基盤を確実に維持する』ことを実現するため、我が国の宇宙輸送システムを自立的かつ持続可能な事業構造へ転換することを目指して開発を進めている。」(「H3ロケットの開発状況について」宇宙航空研究開発機構より)と記されている。要するにコストを押さえ環境に配慮し、自前で宇宙開発を行うことが第一の目的だと推測できる。まさに科学の最先端を担っているのであるが、そのリーダーが「無限の存在」を意識しておられるということは、とても興味深いことであった。知れば知るほど私たちは「無限の存在」に気付かされていくのだろう。
保育園の子どもたちに話をする時に、勿論、「魔物が棲んでいる」とは言わない。聖書の神様の話をしながら、信じてもらうことではなく「無限の存在」に気付いて欲しいと願って話をする。その存在に気付く知恵こそが、子どもたちの人生を豊かにし、困難にも向かう勇気を与えてくれると信じているからだ。そういえば、教会の前の掲示板を見詰める人を時折見かけるが、あの人たちも「魔物が棲んでいる」ことに気付いた人たちなのだろう。
神様と呼んでくれるのは知恵の初め。この先もそう呼ばれたら笑顔だけで応えよう。