音楽宣教師の久米小百合さんによるキリスト教カウンセリング研究講演会「愚痴(ぐち)も悩みも歌にして……」(主催:聖学院大学総合研究所)が1日、日本印刷会館(東京都中央区)で開催された。
シンガー・ソングライター「久保田早紀」として活躍していた1981年、洗礼を受けてクリスチャンとなったが、そのきっかけとなった背景にも音楽の存在があったという。
「私は幼い頃、賛美歌を通して初めてキリスト教信仰に触れました。その後、長く教会から離れていましたが、歌の仕事に追われていたまっただ中で『自分が本当にやりたい音楽は何だろう』と迷い、再び教会へ通い始めて、神様と出会いました」
「音楽には、心のひだに入り込む力がある」といい、久米さんはそれを「心の壁紙」と呼んでいる。
「壁紙を変えるとガラリと部屋の雰囲気が変わるように、音楽一つで気分も大きく変わります。たとえば、ビートのきいた音楽には気分を上げる効果がありますが、1日じゅう聴いていたら疲れてしまいます。むしろ、心地よい音に囲まれて過ごすほうが、心の健康にもつながるのではないでしょうか」
実際にピアノで和音と不協和音を出し、それぞれが心理的にどのように作用するかを説明した上で、「悪い言葉を一切口にしてはなりません」(エフェソ4:29)という聖句から、「日ごろ何気なく発している言葉も健全でありたいですね」と語った。
「『苦しい』『つらい』と嘆き続けていると、心の壁紙は真っ暗になります。ネガティブな言葉で自家中毒を起こしてしまうんですね。そんな時はぜひ一呼吸置いて、気持ちを歌にしてみてください。不思議なもので、人は歌いながら怒れないし、誰かのことを恨(うら)むこともできません。たとえば、腹が立って『コラ!』と言いたい時でも、それに節をつけて歌ってみてください。笑ってしまうはずです」
後半には質疑応答コーナーが設けられ、「賛美をする際に大切にしていることは」という問いが会場からあった。「皆さんと一緒に歌うことです。自分だけを見てもらうために歌っていたシンガーの時とは違って、今はイエスを喜ばせるために歌っています」
また、「信仰を持って音楽の意味が変わったか」という質問には、次のように答えた。「信仰を持つ前は、音楽は自己表現の道具の一つでした。今は、神様が最高のアーティストであり、音楽だけでなく、すべての芸術は神様からのギフトだと思っています。音楽をやらせていただけるだけで、すごいことだと感じているんですよ」
講演の最後には、賛美歌「遠き国や」が歌われた。関東大震災が起きた時に作られた曲で、東日本大震災の被災者支援のために歌い続けているという。また、「あなたたちは喜びのうちに、救いの泉から水を汲む」(イザヤ12:3)がそのまま歌詞になっている「マイム・マイム」など3曲も披露された。
「『主に向かって心から賛美し、歌いなさい』(エフェソ5:19)とあるように、歌で神様を賛美することは命令として聖書には記されています。また、悪霊に取りつかれたサウロ王が、ダビデの歌を聴いて心が落ち着いたというシーンもあります(サムエル上16:23)。『たかが歌、されど歌』かもしれませんが、歌には人の心をリラックスさせる効果があります。憤った時は鼻歌でもいいので、ぜひ歌ってみてください」