「ナルニア」のような教会を目指して 新井健二 【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】

私が仕える友愛キリスト教会には「ピザ窯」と「BBQテラス」があります。どちらも毎月第四土曜日に行われている「クロスロード」というDIY(日曜大工)活動と交わりを目的とした集まりの中で造られたものです。それだけでなく、お正月には「お餅つき」、夏には「流しそうめん」と、私たちの教会では年間を通して「食べて楽しむ」イベントが盛りだくさんです。

これを聞いて、「なんだか楽しそうだぞ」「一度、行ってみたいなぁ」と思っていただければ、それは「しめたもの」ですが、一方で、教会に「そんなものは必要ない」「不謹慎だ」と感じる方もおられるかもしれません。そこでここからは、なぜ教会でDIYや「食べて楽しむ」イベントばかりしているのか、という質問や苦言への言い訳をさせていただきたいと思います。

まずDIYについてですが、あるころから、私たちの教会の中で「食事や交わり」のための新しい「場」として、「テラス」を持ちたいという願いが共有され始めました。とはいえ、すぐに外部のプロにお願いするような経済的な力は教会にはありません。そこで賜物と情熱を持つ教会員の方が声を上げてくださり、上にも言及した「伝道」と「交わり」とDIY活動を兼ねた集まりとしての「クロスロード」が始まりました。「クロスロード」には、当初から神様の不思議な導きもあり、日ごろは礼拝に出席されない教会員の家族や友人の方々に加えて、地域で活動する依存症からの回復を目指した自助グループの方々など、多くの方々が集まり始めました。そして、その交わりの中にも「食べて楽しむ」ことは常に豊かにありました。

次に、「食べて楽しむ」ことについてですが、聖書において「キリストの福音」による「救いの喜び」が、「宴会」のイメージで語られることが非常に多くあることはご承知のことと思います。

その上で、「福音」と「宴会」と聞いて私がまず思い浮かべるのは、あの「カナの婚礼」において主イエスが行われた「水」を「ぶどう酒」に変えるという奇跡です。そして、あの場面における「ぶどう酒」は十字架で流されたキリストの「血」の象徴であると同時に、「福音」による「救い」が私たちにもたらす「喜び」と「楽しみ」の象徴でもあったと私は理解しています。

もう一つ、「福音」と「宴会」というテーマについて、私がいつも思い起こすのは、C・S・ルイスの「ナルニア国ものがたり」第2巻『カスピアン王子のつのぶえ』の中の一場面です。それは偽りの支配者である「テルマール人」の手から「ナルニア」を取り戻すために、キリストを象徴するライオンの王「アスラン」が「ナルニア」に帰ってきたことを喜ぶ場面ですが、そこには「バッカス」や「シレノス」「バッカスおとめ」といった酒宴の神々が現れて「よう、よう、よう、おい、おい、おい」と叫び始めます。すると、その辺り一面にブドウの木がはびこり「まことにすばらしいブドウ」を「いやというほどたくさん」に実らせ、主人公である姉妹ルーシィとスーザンは「礼儀もへったくれも」なく「ブドウ」を「口いっぱいに食べながら、大笑い」をして、「よう、よう、よう、おい、おい、おい」と拍子をとるのです。これほどまでに見事に「福音の喜び」の自由闊達さを表現している創作物を私は他に知りません。

私の夢は、その「ナルニア」のような教会をこの岐阜の地に形成することです。

あらい・けんじ 1977年千葉県生まれ。機能不全家族の中でアダルトチルドレンとして育つも、25歳で信仰に導かれる。友愛キリスト教会(岐阜県各務原市)牧師、社会福祉士、精神保健福祉士、LGBTQ+ ally。趣味は焚き火、映画鑑賞、読書は哲学書から漫画まで、音楽は洋楽・邦楽を問わずロックから演歌、クラシックまで幅広く。

関連記事

この記事もおすすめ