米福音派の名門ウィートン大学で物議 卒業生ラッセル・ボート氏の予算局長就任めぐり

 米国イリノイ州の福音派の名門ウィートン大学をめぐり、卒業生や福音派関係者を広く巻き込む論争が起きている。「レリジョン・ニュース・サービス」(RNS)が報じた。

発端となったのは、トランプ大統領が予算局(OMB)長に指名したラッセル・ボート氏の就任が2月6日に上院の決議で承認されたこと。ボート氏は超保守的な政策構想「プロジェクト2025」の作成に深く関与しており、リベラルな人種・環境・ジェンダー政策の撤回、教育省の廃止、政教分離の緩和などを目指す「キリスト教ナショナリスト」であることが以前から知られていた。

ボート氏の予算局長就任を受け、その翌日に同氏の母校ウィートン大学はSNS上で同氏を祝福。すると数時間以内に批判のコメントが殺到。中には同大学の卒業生からの批判も多く含まれ、ボート氏のキリスト教ナショナリズムや反動的な社会政策は同大学が教えるキリスト教的価値観に反している、との声が集まった。これを受け同大学は1日以内に問題のSNS投稿を削除した。

すると今度は同大学の保守派の卒業生やその他の活動家らが、それに憤慨。同投稿の削除はリベラリズムに屈服する「臆病な行為」であるとし、ボート氏こそ真に聖書的な価値観を体現した政治家であると擁護。この保守派グループは2月17日にオープンレターを公開し、「時代の精神」に迎合する近年の同大学の傾向への憂慮を表明し、大学がその根幹である聖書の原則に立ち返ることを求めた。このレターには既に740人以上の在校生・卒業生らが署名を寄せている。現時点で大学側はそれに対する応答を出していない。

ウィートン大学は伝道師ビリー・グラハムを輩出したことでも知られる全米屈指の福音派大学で、「キリスト教学校のハーバード」とも呼ばれる名門。政治的には党派色を出すことを避ける傾向にあり、近年は共和党支持の福音派の保守陣営からは失望の声も寄せられていた。

(木村 智)

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