2014年の香港大規模民主化デモ「雨傘運動」の学生リーダーだった黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(22)が17日、米議会の公聴会に出席して、香港で続くデモの状況について証言した。そして、中国が香港に高度な自治を認める「一国二制度」が守られているかどうかを毎年検証する「香港人権・民主主義法案」などの早期可決を米議会に求めた。法案は、6月に共和党と民主党の超党派の議員が上下両院に提出していて、早ければ9月内にも審議が始まる見通し。
黄氏は1996年、香港生まれ(香港が中国に引き渡される9カ月前)。両親の影響を受けて、幼い頃からルーテル教会に出席し、ユナイテッド・クリスチャン・カレッジで学んだ。現在、「暴力に頼らない民主化路線」などを掲げて2016年に結党された政党「香港衆志(デモシスト)」の秘書長(事務局長)。この運動も、マルティン・ルーサー・キング牧師に触発されたものだという。
「タイム」誌の表紙も飾った黄氏は、2014年の最も影響力のある10代として紹介され、その年のPerson of the Yearにもノミネートされた。また、15年の「フォーチュン」誌では「世界で最も偉大なリーダー」の10位にランクされ、18年にノーベル平和賞にノミネートされている。
黄氏は8月30日、「民主の女神」と呼ばれるカトリックの周庭(アグネス・チョウ)氏(22)らと共に逮捕され、「認可されていない集会への参加を人々に扇動した」罪で起訴されたが、その日のうちに保釈された。その後、9月3日から台湾を訪れ、8日、帰国した足で続けてドイツへ向かおうとしていたが、香港空港で「保釈条件に違反した」として約24時間拘束された。しかし裁判所が翌日、「逮捕前にすでに手配されていた海外渡航は許可されている」と確認して、黄氏の身柄拘束は解かれた。1日遅れだが、黄氏は当初の予定どおりドイツに向かい、9日夕方にベルリンに到着した。
その後、独紙ビルド主催のベルリンでのイベントで、ドイツのマース外相と面会。中国外務省の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は10日の会見で、ドイツが黄氏の入国を認め、外相と面会させたことに「極めて不満であり、断固反対する」と述べた。「香港は中国固有の問題であり、外国の政府、組織、個人が干渉する権利はない。外国人を頼って国を分断しようとする行動、発言はすべて失敗に終わることになる」
その前にドイツのメルケル首相が6~7日に中国を訪問し、習近平国家主席、李克強首相と相次いで会談したが、そこで香港情勢について平和的な解決を求めていた。メルケル首相の訪中前に黄氏が同首相に宛てた書簡を、4日付の独紙ビルトが公開している。「あなたは旧東ドイツで育ったので、共産党独裁体制の恐怖をじかに経験している。冷戦終結前にドイツや欧州を突き動かした、独裁的で不公平な体制に対する勇気と決意をあなたが見せてくれることを望む」。黄氏もメルケル氏も共にルーテル教会のクリスチャン。
その後、黄氏は米国に渡って公聴会に臨んだ。9月下旬まで海外に滞在する予定。10月1日は中国の「国慶節」(建国記念日)で、その後、香港に対する中国共産党の圧力が強まるのではないかといわれている。特に香港の民主化リーダーにはクリスチャンが多いので、中国本土のクリスチャンへの締めつけも増す懸念がある。