JTJ宣教神学校(東京都台東区、Jesus To Japan Mission Seminary、以下JTJ)は、1990年に設立された福音派の神学校。「だれでも、いつでも、どこででも」を理念に、通信制と教室制の二つの方法で、日本中の学生が学んでいる。2016年1月〜18年12月までの神学部入学生は237人。創設以来、学長を務めた岸義紘(きし・よしひろ)さんに代わり、12年に学長に就任した横山英実(よこやま・ひでみ)さんに話を聞いた。教務課の伊藤昌年(いとう・まさとし)さんにも加わっていただいた。
──横山先生の子ども時代について教えてください。
私は1951年、東京都江戸川区生まれで、クリスチャン・ホームで育ったのですが、父が無教会、母が日本伝道隊でした。聖書理解や信仰表現が違う両親に育てられたことで、キリスト教にもさまざまな考えがあることを幼い頃から体験できたので、非常によかったと思っています。
──青山学院大学に通っていた時に洗礼を受け、その後、一般企業に入られたと聞いています。
大学卒業後、一般企業に勤めますが、間もなく「ここは自分には合わない」と感じ、退職しました。その後、母の開拓教会を教室にして学習塾を始めました。その頃から、真剣に聖書を読み始めました。それまでも聖書は読んでいましたが、神様と私の関係を考えるような読み方ではありませんでした。
ある日、御言葉が迫ってくる体験をし、「本当に神様は生きて働かれているのだ」ということを心の底から実感しました。まさに人生のターニング・ポイントでした。それで、「神学校に入って聖書をきちんと学びたい」と思い、東京神学大学へ編入学しました。
私が東神大にいた頃は、カトリックからペンテコステまで、さまざまな学生がいました。私が寮に入る時の寮長が深谷春男(ふかや・はるお)先生で、その後、青年宣教大会でもご一緒しました。当時は竹森満佐一(たけもり・まさいち)先生が学長で、「とにかく御言葉に生きろ」と言われた竹森先生の説教は今も心に残っています。
東神大を卒業し、開拓教会で25年間、牧会させていただきました。同時に、保育園の運営をするようになります。
──JTJはどのように始まったのでしょうか。
創立の母体になっているのは、80年代初頭に始まった「青年宣教大会」運動です。岸先生(ミッション2001伝道者)、大川従道(おおかわ・つぐみち)先生(大和カルバリーチャペル牧師)、深谷先生(日本基督教団・新宿西教会牧師)、故・瀬底正義(せそこ・まさよし)先生(元カンバーランド長老・希望ヶ丘教会牧師)など、当時30代後半の先生たちが「日本の青年に宣教のビジョンを与える大会が必要だ」ということで始めた運動で、20代の私にも「参加してほしい」と声がかかりました。
第1回は天城山荘で開催されたのですが、およそ350人が集まりました。毎年、参加者は増えていき、1000人規模の大会になっていきました。そして、次のビジョンとして、宣教のために人々を整えなければいけない。そのためには神学校が必要だということで、90年、新しい神学校が備えられました。それがJTJ宣教神学校です。岸先生が学長、中野雄一郎(なかの・ゆういちろう)先生が国際学長を務めました。私も、ほぼ開校当初から関わらせていただいています。
──JTJの特色を教えてください。
神学部は2年コース(牧師志願科、信徒牧師科)と1年コース(信徒伝道者科、信徒聖書教師科、教会学校教師科)、そして科目履修科があります。あと、通信制だけですが、生涯学習部(カウンセリング・コース)があります。
現在は信徒伝道者コースも作る神学校が増えていますが、JTJは設立当初から、信徒として主に仕える志を持った人のためのコースを設けてきました。入学には、学歴、性別、国籍だけでなく、召命感も問いません。「献身」「召命」という言葉を使うと、敷居が高くなります。聖書を学びたいクリスチャンであれば、誰でも学べます。学んでいるうちに御言葉によって召命感は養われていくと思いますし、聖書の学びをしていく中で宣教の思いを育(はぐく)んでいければと考えています。そういう意味でJTJは、従来の神学校の概念を打ち破ったと言えるかもしれません。
──学習方法について、具体的に教えてください。
教務課の伊藤さん:通信制と通学制の二つの学び方があります。通信制はインターネットとDVDの2コースあって、6割がDVDコースを選択しています。このコースだと、インターネットの授業も無料で聴けるというメリットがありますし、卒業した後もそのままDVDを持っていられるので、DVDコースを選ぶ人が多いのかなと思います。
2年くらい前から、スマホやiPadでも対応できるようになり、中には通勤電車の中で勉強している人もいます。だいたい2割が通学制、8割が通信制ですが、この割合は設立当初から変わっていないと聞いています。日本中だけでなく、世界中に学生がいる感じです。(後編に続く)