神さまが共におられる神秘(57)稲川圭三

 

一緒に生きて教える

2016年5月29日 キリストの聖体の祝日
(典礼歴C年に合わせ3年前の説教の再録)
あなたがたが彼らに食べ物を与えなさい
ルカ9:11~17

今日は、「キリストの聖体」の祭日を迎えています。今日の御ミサの中で今年の初聖体式が行われます。今日は15人の子どもたちが初聖体を受けます。

キリストの体であるご聖体をいただいて、イエスさまは私たちと深く一緒に生きてくださるいのちになります。そして私たちは、一緒にいてくださるイエスさまと一緒に生きる者となります。イエスさまは人を幸せにするために働いてくださった方ですから、私たちもそのように生きる者になります。

ご一緒に感謝の祭儀をおささげしましょう。聖体を受ける恵みをいただいている方は、ご自分の初聖体の時を思い、また、ご自分もいつかはその恵みにあずかりたいとお望みになられる方は、その恵みの時を思って、今日、初聖体を迎える子どもたちのために、ご一緒にお祈りください。

「群衆はそのこと(イエスがベトサイダに行ったこと)を知ってイエスの後を追った。イエスはこの人々を迎え、神の国について語り、治療の必要な人々をいやしておられた」とあります(ルカ9:11)。その群衆というのは、「男が五千人ほどいた」ということでした(14節)。

今ここにいるのは200人とか、250人はいないと思うんですが、5000人というと、今日ここにいる人よりも全然多い人数ですね。2倍でも500人、20倍で5000人かな。とにかく、大勢の人にイエスさまはお話しされていました。

「神の国について語った」とあります。どういうことだか分かりますか。「神の国」というのは、すべての人の中に神さまがいらっしゃるということ。そして、そのことを皆がお互いに受け取って生きることを「神の国」というのだと思いますよ。

イエスさまは皆にお話しになったと思う。「あなたたちは皆、神さまの子どもなんですよ。あなたたち、知っていますか。皆さん一人ひとりの中に神さまのいのちがあるんですよ。神さまはもともと土の塵(ちり)で人間を創(つく)って、その中にご自分のいのちを吹き込まれたんですよ。あなたたち一人ひとりの中には神さまのいのちがあるんですよ」。そうお話しになりました。

「人間は皆、神さまの子ども。一人の例外もなく、神さまが一緒にいてくださる大切ないのちなんだよ」ということをお話しになられたのだと思います。

でも、イエスさまは言葉でお話しなさるだけでは、皆にそのことが本当には伝わらないということを知っておられました。

今日、子どもの皆さんの初聖体式ですが、皆さん一人ひとりの中には神さまが一緒にいてくださるんですよ。そして、すべての人に神さまが一緒にいてくださいます。そのことを皆が受け取って、皆が大切にして生きたらいいと思う。

それなのに私たちは、お友だちの中に、人の中に神さまがいてくださるということよりも、何か悪いことを見つけちゃったりしてね。嫌なところばかり見てしまったりしているかもしれませんね。

お互いがお互いの中に神さまのいのちを見いだし合って生きるところを「神の国」というのだとイエスさまは教えられました。しかし、私たちはいくら教えられても、そのことが分かりません。そこで、何とかしてこのことを皆に教え、分からせたいとイエスさまは思いました。

どうやって教えるのか。

ご自分が食べられるものになって、皆に食べられて、そしてその人と一緒に生きるいのちになろう。神さまがいてくださることを一緒に見て、生きるいのちになろう。そうイエスさまはお考えになられました。

今日、皆さんは初聖体をいただきますね。何回か練習しました。「キリストのおん体」と言われて、掌(てのひら)にご聖体を渡されると、「アーメン」と答えて、ご聖体をいただきます。そういう練習をしたんです。

神父さんはこういうことだと思うんですよ。イエスさまは「これは私の体。食べなさい」と言われて、パンを出されるんです。そして、「これは私の体。私はあなたに食べられて、あなたと一緒の向きで生きるいのちになるよ。あなたは私を食べて、私と一緒の向きで生きるいのちになるよ。そんな仲良しになるけれど、いいかい?」と言われて、「アーメン」(はい)と答えて食べるのが、キリストの聖体、皆さんの初聖体じゃないかなと、そういうふうに思うんです。

どうぞ今日、皆さん、初聖体をいただいて、初聖体をいただく皆さんだけでなく、ご聖体を受ける恵みにあずかっている皆さんは、心を新たにしてご聖体をいただきましょう。

イエスさまは人のために生きた方だから、私たちも人の幸せのために働くことができますように。その力をくださいますから、イエスさまと一緒に生きるいのちになるように。お願いをして、ご聖体にあずかりましょう。

稲川 圭三

稲川 圭三

稲川圭三(いながわ・けいぞう) 1959年、東京都江東区生まれ。千葉県習志野市で9年間、公立小学校の教員をする。97年、カトリック司祭に叙階。西千葉教会助任、青梅・あきる野教会主任兼任、八王子教会主任を経て、現在、麻布教会主任司祭。著書に『神さまからの贈りもの』『神様のみこころ』『365日全部が神さまの日』『イエスさまといつもいっしょ』『神父さまおしえて』(サンパウロ)『神さまが共にいてくださる神秘』『神さまのまなざしを生きる』『ただひとつの中心は神さま』(雑賀編集工房)。

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