NPO法人抱樸(福岡県北九州市、奥田知志理事長)は9月6日、「社会福祉法人抱樸」(福岡県北九州市、森松長生理事長)を設立したことを発表した。社会福祉法人設立により救護施設「抱樸館」が具体化され、「希望のまちプロジェクト」が開始されることになる。「希望のまち」まちびらきは、2025年4月を予定している。
隙間のない支援のためNPO法人抱樸では、2018年より社会福祉法人の設立を目指して計画を進めてきた。20年4月には、北九州市小倉北区の特定危険指定暴力団「工藤会」の本部事務所の跡地を社会福祉法人の基本財産とするため購入。コロナ禍の困難な状況の中、社会福祉法人設立準備会の発足、希望のまち推進協議会の発足などにより「希望のまちプロジェクト」の検討・推進が進められてきた。そして今回、認可申請等の手続きが終了し、社会福祉法人設立に至った。
今後は、2024年1月に建設を着工し、具体的な開設・開所は25年4月を予定している。今回の社会福祉法人抱樸の設立にあたり、理事長に就任した森松氏は次のように語っている。
抱樸の活動が開始されてから35年。「断らない支援」「ひとりにしないという支援」「つながりの支援」「家族機能の社会化」「伴走型支援」という言葉と理念が共有・深化され、あるいは新たな言葉が生まれました。そして、その言葉の具体化として社会福祉法人が設立されました。「希望のまち」が開設されます。抱樸は、これからNPO法人と社会福祉法人と2つの事業形態をもって、「ひとりも取り残されない社会」を目指して活動していきます。
また、NPO法人抱樸の奥田理事長は、社会福祉法人の設立についてこう話している。
NPOの強みは「自由」。原則的に何でもできます。抱樸は、その強みを生かし、ひとりとの出会いから創造的に事業を興し、必要に応じて連携の仕組みを創ってきました。これがNPO抱樸の最大の特徴です。一方で、制度を利用しない分、専門性に課題があります。抱樸は、専門性を高めるために社会福祉法人を設立する準備をしています。社会福祉法人は、制度を基盤とするために対象者が限定されますが、「広く、自由」なNPO抱樸との連携により「断らない」という在り方を一緒に実現します。
NPO法人抱樸は、日本バプテスト連盟東八幡キリスト教会牧師の奥田知志氏が中心となり1988年に発足し、北九州を拠点に、生活困窮者や社会からの孤立状態にある人々の生活再建を支援している。コロナ禍では1万人を超える方から1億円以上の寄付を集め、全国10ケ所で居住支援事業を展開。「2021北九州SDGs未来都市アワード」で「SDGs大賞」を受賞。
「希望のまちプロジェクト」とは、特定危険指定暴力団工藤会の本部跡地を活用して「希望のまち」の拠点をつくり、「誰もひとりにしないまち」を実現するプロジェクト。「子どもの居場所と家族支援」「地域生活サポートセンター」「救護施設」「障害のある方の居場所」「避難所・防災機能」などの機能を備えた複合型社会福祉施設を建設し、全ての人にとっての「居場所(ホーム)」として拠点に据え、新たな「まち」を広げていくことを目指している。2022年4月に寄付キャンペーンをキックオフし、23年9月15日時点で約2億2,700万円の寄付が集まっている。