謙虚な姿勢で、独自性高く、事例に則した解明
〈評者〉島薗 進
スピリチュアルケア
入門篇
中井珠惠著
四六判・224頁・定価1760円・ヨベル
スピリチュアルケアとは何か。現在、変容しながら、広められ、深められている事柄である。それだけにわかりやすく説明するのは容易でない。ところが、この書物は、それを現場の経験に即して、たいへんわかりやすく説明してくれている。
まず第1章は歴史篇と言える。現在、諸宗教、ひいては無宗教の人々にも次第に深く関心をもたれるようになっているスピリチュアルケアだが、もとはキリスト教の牧会ケアにある。では、牧会ケアはいつどのように形をなして来たのか。キリスト教には「たましいのケア」の長い歴史がある。だが、二〇世紀に入ってそれが新たな様態に展開する。「顔の見える一人ひとりを大切にし、それぞれの抱える問題を支援するように」なる。アントン・ボイズンやリチャード・キャボットにより臨床牧会訓練が体系化され、学問的にも基礎づけがなされるのは一九四〇年代のことだ。(つづく…)