田中光著 新しいダビデと新しいモーセの待望(鎌野直人)【本のひろば.com】

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評者: 鎌野直人

チャイルズの解釈学的手法からメシア預言の使信を探る
〈評者〉鎌野直人


新しいダビデと新しいモーセの待望
イザヤ書の正典的解釈

田中 光著
A5判・600頁・定価7370円・教文館
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英語圏で著名な聖書学のポッドキャスト「OnScript」において「最近五〇年の聖書学の著書で最も重要なものはなにか」というアンケートが出演者に投げかけられると、多くの旧約聖書学者はB・S・チャイルズの『聖典としての旧約聖書入門』(未翻訳、一九七九年)と答える。その一方で、チャイルズの著作のなかで和訳されたのは『出エジプト記─批判的神学的注解』(一九九四年邦訳)と『教会はイザヤ書をいかに解釈してきたか─七十人訳から現代まで』(二〇一八年邦訳)にとどまり、チャイルズが提案したカノン的解釈を適用してきた邦語による研究は数少ない。
今回、『教会はイザヤ書をいかに解釈してきたか』の翻訳者の一人で、東京神学大学常勤講師の田中氏が、二〇一八年に東京神学大学に提出した博士論文が出版されたことは、日本の旧約聖書学研究において画期的なことである。
その理由の一つは、チャイルズの提案するカノン的解釈(従来「正典的解釈」と呼ばれている)の全体像が日本語でまとめられたことである。各書の形成から最終形態へのプロセス、後の世代の解釈のために置かれた「インターテクスチャリティー」、この枠組みを踏まえている聖書解釈の歴史など、誤解されがちなカノン的解釈の特徴を正確に説明している。さらに、信仰の基準とカノンとの間に存在するよりダイナミックな関わりを注意深く表現している。第一章は旧約聖書学緒論研究に不可欠なものとなると評者は確信する。
本書が画期的であるもう一つの理由は、、、、

つづきは本のひろば.comで見る

 






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