カトリック信者の松本准平(まつもと・じゅんぺい)監督による映画「パーフェクト・レボリューション」の無料上映会が23日、カトリック麹町教会(聖イグナチオ教会、東京都千代田区)で行われた。カトリックの青年たちによるインターネット・ラジオ番組「カトラジ!」と「シグニス・ジャパン」(カトリック・メディア協議会)の共催によるもの。同作は第42回カトリック映画賞でシグニス特別賞を受賞した。
この映画の企画・原案は、障がい者の性に関する情報提供を行っている熊篠慶彦(くましの・よしひこ)氏。自らをモデルにした脳性麻痺の男性クマをリリー・フランキーが演じる。
そんな彼に恋する20歳年下の風俗嬢ミツもまた、パーソナリティ-障がいを抱えていた。まわりに立ちはだかる壁を壊して「完全なる革命(パーフェクト・レボリューション)」を遂げようとするが、それは成功に終わるのか、失敗に終わるのか、最後まで目が離せない作品だ。
上映会後、「性とカトリック」をテーマにトークショーが行われた。登壇したのは、松本監督と晴佐久昌英(はれさく・まさひで)神父、「カトラジ!」MCのトオルさんと同スタッフのレナさん。
冒頭、松本氏はこう語った。「性というと、どうしても罪、ネガティブなイメージと結びついてしまうが、この作品は、人間の尊厳の一つとして性を描くというポジティブな側面を出したかった。性は一種の愛情表現にもなりうるが、それとは程遠いところにある性的欲求もある。その欲求を満たすためだけに相手を傷つけてしまう罪にもなりうる」
これに対して深い共感を示したのが20代のトオルさん。
「中学2年で洗礼を受けた頃から、性のことは教会で教えられ、『君はまだ若く、罪に陥りがちだから、気をつけるように』と言われてきた。だから、頭の中でセックス=罪、やってはいけないこととインプットされている。『聖書に書いてあるからダメ』というだけで、誰も理由を教えてくれなかった。しかし、昨日まで目を覆われていて『罪だ』と言われていたものが、結婚したその日から『はい、どうぞ。産めよ、増やせよ』と言われたって、そんなことは怖くてできない。それくらい僕にとって性とはネガティブなものだった」
教会の青年たちが性に対して罪悪感を覚える背景には何があるのだろうか。晴佐久神父は、「性の本質を教会は今まで十分に語ってこなかった」と指摘する。「性は、もともと他人だった夫婦が家族になるためにいちばん大切なもの。性がきちんと語られない代わりに、不幸にもモラルが優先してしまった」
では、性をどう語り、理解していけばよいのだろうか。
「性は大切に扱わなければならないテーマで、考えることが何よりも大事。二人が幸せになるためにはどうしたらよいか、考えた上で出した結果、セックスしたとしても、それを正直に神様に告白すればよいのでは」とトオルさん。
同作は、障がいのある二人が真剣に向き合い、愛を貫く姿が描かれる。「この二人を神様がどう見ているか」という質問に、晴佐久神父がこのように答えた。
「いつもごまかしたり、あきらめたりして、偽善的に生きる自分たちと比べると、彼らの生き方はとてもまぶしく映る。人間はきちんと向かい合うために創られているのだから、彼らは誰よりも真剣に生きて、神様と向かい合っているのではないか。
神様ときちんとつながることこそ重要。神様がどう見ているかより、神様は『早く自分の存在に気づいてほしい。そこに流れる自分の思いを感じてほしい』とお思いなのでは。
あの二人をどう見ているか、神様にしか分からないが、神様はお喜びなのではないかと私は思っている」
トークショー終盤には、会場からこんな質問があった。
「『カトリックと性』というタイトルに惹(ひ)かれて参加したが、まだモヤモヤしている。『聖書に書いてあるからダメと教えられた』と話があったが、ダメな理由は何なのか」
それに対して晴佐久神父は答える。「マルバツだけでは判断できない。神様はすべての人を救いに導くため、たとえ失敗を犯しても、悔い改めて神のもとに行った時には、『よくやった』と受け入れてくださるのではないか」