仮装やコスプレをした人々が町に繰り出し、日本でもすっかり定着したハロウィンの光景が31日、各地で見られる。特に今年、ハロウィン当日の夜は満月(時刻は午後11時49分)。気象庁の天気予報によると、おおむね晴れるところが多く、全国的に満月を鑑賞することができそうだ。
10月31日に満月になるのは、1974年以来46年ぶりのこと。次に10月31日が満月となるのは、38年後の2058年。
しかも今日は「ブルームーン」でもある。1カ月で2度目の満月のことで、10月2日も満月だった。満月をひと月に2度見られるブルームーンは数年に一度しか訪れず、次は3年後の2023年となる。
また、今年最も小さい満月「マイクロムーン」でもある。地球から月までの距離は、35万6000キロから40万7000キロの間で変化しており、31日は最も地球から離れている満月なのだ。反対に、1年のうち最も大きな満月を「スーパームーン」と呼び、今年は4月8日に見られた。その時より月が約5万キロも地球から離れたことになる。
ところで、ハロウィンをキリスト教の祭りと勘違いしている人も多いが、むしろキリスト教では異教とされるヨーロッパのケルト人の祭り。秋が終わり、冬の始まりとともに死者の霊や魔女が訪れるので、人々は仮装して身を守り、魔除けのたき火をした。そういうことから現在、魔女やお化けに仮装した子どもが近所の家を訪ねてお菓子をもらったり、カボチャをくり抜いたランタンを飾ったりするようになったのだ。
一方、カトリックでは11月1日を「諸聖人の日(万聖節)」として、すべての聖人と殉教者を記念する。英語でそれを「All Hallows’ Day」(hallowは「崇敬する」という意味。All Saints’ Day)といい、その前夜(イブニング)「All Hallows’ Eve」の短縮形が「ハロウィン」(Halloween)だ。「諸聖人の日」は最初、ペンテコステ(キリストが復活した後、聖霊が与えられたことを記念する)後の最初の主日に守られていたが、9世紀に「諸聖人の日」を11月1日とした。
そして、その翌日が「死者の日」とされ、すべての亡くなった信徒を記念する。カトリック教会では、この日の前後に共同墓地に集まって墓参の祈りを行ったりする。ちなみに、日本では墓を「故人や先祖の魂が眠る場所」と考えるが、キリスト教では、墓に魂が宿っているとは考えない。あくまで、その人は「神のもとへ凱旋する」のであり、墓はただ故人を偲(しの)び、記念する場所なのだ。
こうしたカトリックにおける「死者の日」と、死者の霊や魔女が訪れるとするケルトの風習が混同されて、あたかもハロウィンがキリスト教の祭りのように書いているネットの記事も散見されるので、気をつけてほしい。
一方、プロテスタントにとって10月31日は「宗教改革記念日」だ。1517年のこの日、マルティン・ルターが贖宥状(しょくゆうじょう)の販売を糾弾する「95ヶ条の論題」を貼り出してプロテスタントが生まれたことを記念する。カトリックの誤った点を聖書に基づいて正したのが宗教改革で、カトリック自身も16世紀の対抗宗教改革や第2バチカン公会議(1962~65年)などで自己改革を進めている。
ただ宗教改革以降、プロテスタントでは、カトリックの「聖人崇敬」(聖人を信仰の模範として敬うこと)などを排除したため、「諸聖人の日」や「死者の日」を記念することはない。プロテスタントは聖書を重視するあまり、町全体を巻き込んで共同体で信仰に生きるための習慣を持つことが少ないのだ。そうすると、どうしても個人主義的になってしまい、教会の外側と内側とが隔絶されがちだ。そうしたことから、米国などプロテスタントの強い英語圏の国々では、近年かえって異教の祭りであるハロウィンが広まるという皮肉なことになっているのではないだろうか。