「電子機器の利用が増えるにつれ、人間同士のアイコンタクトは減っている」と社会学者シェリー・タークルは指摘する。米国では、かつて公共交通機関や食事の席で人々が顔を合わせていた時間をスマートフォンが奪い、自然な会話が失われているのだ。
飛行機で伝道するのに熱心なクリスチャンは、隣の人がいつも画面ばかり見ているため、話しかける機会が少なくなっていると感じているだろう。
本年(2018年)、バーナ・グループ(信仰と文化に関するリサーチを専門とする調査会社)は、テクノロジーの影響に焦点を絞って、米国における宗教についての会話をめぐる状況の調査を行った。調査内容は、「デジタル時代にあって、信仰について話をすることは前より難しくなったか、楽になったか」、「クリスチャンが自分の信仰について話したり福音を伝えたりすることに、インターネット上の行動はどう影響しているか」といったものだ。
調査の結果得られた回答は単純なものではなかった。米国のクリスチャンは今日のテクノロジーを「新たな障害」と認識しつつも、「テクノロジーによって新しく生まれた機会にはある程度の利点がある」と考えていることが明らかになったのだ。
バーナ・グループは、2018年の報告書『デジタル時代における宗教に関する対話』で、「コミュニケーション手段は発達している。必然的に、信仰についてのコミュニケーション手段も変化している」と書いている。
シェリー・タークルが『会話を取り戻す』(2015年、邦訳なし)で述べたように、バーナ・グループの調査結果が示したのは、大多数のクリスチャンが「顔と顔を合わせての会話がなくなっている」と感じており、若い世代ほどこの問題に敏感ということだ。
米国では、ミレニアム世代(*1)とX世代(*2)の69パーセント、ベビーブーマー世代(*3)の60パーセントが、「人々はいつも電話にかかりきりで、1対1での対話がしにくい」と感じている。
一方、米国のクリスチャンの半数強(55パーセント)が、「テクノロジーは、宗教に関する対話を避ける傾向を加速させた」と思っており、うちミレニアム世代(64パーセント)とX世代(60パーセント)は最も強くその変化を感じている。
*1 ミレニアム世代:米国で1980年代から2000年代に生まれた世代で、共同体への帰属意識が高く、デジタル・ネイティブであることが特徴とされる。
*2 X世代:米国で60年代から80年代初めまでに生まれた世代で、個人主義と内向性が特徴とされる。
*3 ベビーブーマー世代:米国で46年から60年代前半までに生まれた世代。活動的かつ健康的で、経済的に豊かであるとされる。
バーナ・グループの調査はまた、現在20~34歳のミレニアム世代が、どの世代よりも自分の信仰を表明することに圧迫感を感じていることを明らかにした。デジタルな交流に関して、以前より「用心」している人(58パーセント)、自分の信仰が人を不快にさせるのではないかと不安に思っている人(61パーセント)の割合も、ミレニアム世代で最も多い。(フラー神学校ユース・インスティテュートをはじめとするユース伝道のリーダーたちは最近、10代やヤングアダルト世代が直面する福音伝道上の問題に焦点を当てた教材を開発した)。
善かれ悪しかれ、米国人が直接話すことを避ける話題の一部は、ソーシャルメディア上に移行したと言えよう。米国のクリスチャンの半数以上が、「テクノロジーとデジタルな交流のおかげで、自分の信仰を表明しやすくなった」と言っており、多くはフェイスブックやツイッターなどで信仰表明をしている。(次頁につづく)
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