シカゴ大学神学部で40年近く教鞭をとり米国の宗教・神学研究を長く牽引したマーティン・E・マーティーが2月25日、老衰のため死去した。97歳だった。「シカゴ大学ニュース」が報じた。
マーティーの専門は米国プロテスタント教会史。多作な歴史家として知られ、手がけた著書・編著は60冊以上。主著に20世紀米国の宗教界の分断と統合を描いた3巻本『近代アメリカの宗教』(1987〜96年、未邦訳)。邦訳書に『アメリカ教会の現実と使命:プロテスタント主流派・福音派・カトリック』(三宅威仁訳、新教出版社、1990年)。
マーティーの名を特に有名にしたのは1987〜95年に彼が主導した「原理主義プロジェクト」(アメリカ芸術科学アカデミーによる助成)。米国のキリスト教原理主義(ファンダメンタリズム)に加え、世界各地の諸宗教(仏教、ヒンドゥー教、イスラームなど)における原理主義運動を横断的に論じた5巻本を刊行し、宗教学における原理主義研究に大きく貢献した。
大学で研究に従事する傍ら、キリスト教知識人としても精力的に活動。ルター派(ルーテル教会ミズーリ・シノッド)の牧師資格をもち1960年代にシカゴ郊外の教会で約10年間の牧師経験があるほか、主流派プロテスタント雑誌『クリスチャン・センチュリー』のコラムニスト・編集員を半世紀近く務めた。キャリアを通じて公民権運動、人種平等、宗教間対話、政教分離などに尽力した、世代を代表するリベラル・プロテスタントの公共的知識人だった。教派間の協力・対話にも意欲的で、カトリックの第二バチカン公会議(1962〜65年)の際には米国プロテスタント界を代表してオブザーバー参加している。
(木村 智)