【日本FEBC】 日本語放送開始70周年に寄せて(2)特別番組・シリーズ「コロナ時代のメンタルヘルス」

メンタルヘルスの不調をとかく個人的な問題としてとらえがちな私たちにとって、3年目を迎えるコロナ禍は、これが他人事ではないことを共有する契機となっています。
そこで、この4月から始まる特別番組・シリーズ「コロナ時代のメンタルヘルス」、その第1回目の内容を、FEBCにも多く寄せられるリスナーからの声の一つに耳をそばだてることからご紹介します。


月はじめから「被災地の現状」を伝える特集が増え、見るだけで悲しいです。「自分が生き残っている」ことに悩んでしまいます。「もっと生きたかった」「家族と永遠の別れになって悲しい」。そんな人たちがいるのになぜ私は生きているのか。毎日を無意味に消費している私が残っていて申し訳ない。

せっかく申し込んだ聖書通信講座も手が付きません。好きな音楽を聞いても、YouTubeで面白そうな動画を見ても、読みかけの本を読んでいても、フトした瞬間「自分なんかが生き残っていること」への罪悪感に支配され落ち込んでしまう悪循環から抜け出せずに時間を浪費してしまいます。

私はどうしたら良いのでしょう。被災地、コロナの支援だなんだと被災地の物を買ったり、医療従事者への義援金を送ってもなんの足しになるのかわかりません。きっと自己満足なのでしょうか。

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さて、あなたはどう感じられたことでしょう。
キリスト者にとっては、この事を他人事にはできない理由があります。
主イエスこそ「丈夫な人に医者は要らない」と私たちを今日も招かれるからです。

そこで、精神科医の石川憲彦先生は、常識とは違う大変ユニークな視点を語られます。
「本当の兄弟と出会い、本当の自分の生き方と出会うきっかけが、精神障害」だと。

左:石川憲彦(小児科医、精神科医、「林試の森クリニック」元院長) 右:長倉崇宣(日本FEBCパーソナリティ)

ディスオーダーから見つめ直す

FEBC特別番組「コロナ時代のメンタルヘルス」第1回より


長倉 
コロナ禍によって心身のバランスを崩す方も少なくないように思いますが……。


石川 実は、私自身も相当鬱的になったんです。今、人と人との関係が結びにくくなりました。でも逆に、関係が結びやすかったというのはどういうことなのか、それを考えることが大事なことではないでしょうか。私たちは、何でもパッとスムーズにいくのが当たり前だと考えている節がありました。そして、それがどんどん加速しています。しかし、人間ってそんなにパッといくものかな……と。むしろ、そういう関係の中で、私たちはずいぶん多くのものを取りこぼしている気がするのです。私は、自分が鬱的になったことを通して、そういう今まで医師として頭では分かっていたことを少しずつ分かりだしてきた気がしています。

このキリスト教信仰は、神と人との関わりの上で、人と人との関わりを大事にしています。しかし、主イエスは一番最初に40日40夜荒れ野にいた。孤独になるわけです。実は、それこそが、「イエス・キリストの福音のはじめ」なんだと思うんです。ここからスタートするのだ、と。
コロナ禍で人間関係が断たれたと言われますが、そういう人間関係が「救い」になるかどうか。私は、そういう人間関係では駄目だとなった時に、「あなたの父母とは誰か、兄弟とは誰か」を考え、本当の兄弟と出会い、本当の自分の生き方と出会うというきっかけになるのが、精神障害だと思うのです。


長倉
 その点、もう少し詳しくお聞かせ頂けますか?


石川 精神障害はメンタル・ディスオーダー(mental disorder)。ディスは否定の接頭語、オーダーとは人間社会が固く定めたルール。つまり、時代のオーダーから外れてしまう・出来ないことが、精神障害なのです。私たちは普段、本当は神様が与えて下さった人間が生きていくために大事なことを、人間の都合で捨てていっているのです。そういうものを一番確実に示してくれているのは、今のオーダーからはみ出ている人です。ですから、その意味を一緒に考えることが大切なのです。
ディスオーダーを抱えた人が自尊感情を持てるようにするのが精神医療の考え方です。この自尊は、現代ではself esteem、つまり自己評価を下げないようにするという理解が主流です。しかし1990年以前は、それはself respectでした。このrespectという言葉は、リ・スペクト、つまり再び・見る、見つめ直すということ。外の社会や自分自身、人との関係を、今までとは違った視点で見ていくということです。主イエスは「今、『見える』とあなたたちは言っている。だから、あなたたちの罪は残る」(ヨハネ9:41)とおっしゃいました。つまり、外からの評価に汲々とするのではなく、本来自分に与えられているものを見つめ直して、リ・スペクトして、そこから歩み出しなさいと言われているのではないかな、と思います。

FEBC特別番組「コロナ時代のメンタルヘルス」
第1回「ディスオーダーから見つめ直す」
石川憲彦(小児科医、精神科医、「林試の森クリニック」元院長)
聞き手:長倉崇宣(日本FEBCパーソナリティ)

キリスト教放送局日本FEBC

AMラジオ 1566kHz 毎日21:30〜22:45(韓国チェジュ送信所より日本全国放送)
インターネット放送 www.febcjp.com 毎朝10:00更新、24時間聴取可能

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