カルヴァン・改革派神学研究所 『災禍において改革された教会』出版記念会を開催 海外の講師からもメッセージ

カルヴァン・改革派神学研究所(大石周平所長)は9月30日、『災禍において改革された教会 その祈りと告白、実践の歴史と現在』(教文館)の出版記念会を日本キリスト教会柏木教会(東京都新宿区)、およびオンラインの併用で開催した。同書は2021年から22年にかけて、日本とスイスから多彩な講師を招いて行われた同名の公開講座を記録したもの。当日は講師を務めた11人のうち、日本在住の著者8人が顔をそろえた。

冒頭に朝岡勝氏(日本同盟基督教団市原平安教会牧師)は、「コロナ禍において『あれもこれもできない』ではなく『こんな時だから』と始まったリレー形式の企画」と講座の趣旨を紹介。世界各地で発生している戦争、天災、迫害について改革派神学を通し、現代の教会が何を語り、どのように地上に立つべきかと問いかけた。

前半の対談に登壇した石原知弘氏(日本キリスト改革派東京恩寵教会牧師)は戦争を中心とした人災から生まれた世界各地の信仰告白文書に注目し、混乱のただ中で教会自体が改革された歴史について振り返った。吉岡契典氏(神戸改革派神学校専任教授)は、教会の歴史は痛みの中にあっても神の力による「しなやかな立ち上がり」と「強靭な本質」を見出してきたことを強調し、「渦中に我々もいる」と語った。

カルヴァンの自然理解について吉田隆氏(神戸改革派神学校校長)は、「カルヴァンにとってこの世界で災害が起こることは当たり前という認識」であったことを紹介しながら、「大切なのは避けられない自然災害の前で知る謙虚さと信仰による勇気」とし、信仰と知恵を通して立ち向かう人間のあり方こそ、改革派神学における被造物との関わりで重視されていると述べた。

海外からビデオメッセージを寄せたニクラウス・ペーター氏(チューリヒ州改革派教会フラウミュンスター教会元牧師)は、コロナ禍を例に「混乱の中で大切なのは良い病院を知っていることではなく良い神学をもっていること」と述べ、どのような状況でも表明できる信仰告白の存在こそ、危機に対して正しく対応する源になると指摘。キャサリン・マクミラン氏(チューリヒ州改革派シュヴェルツェンバッハ教会牧師)は、ツヴィングリについて「疫病、パンデミック、数々の戦争という災禍の中で彼らは聖書に立ち返った」と述べ、それを起点に他者の必要や社会の変化に対応したと紹介した。同じくメッセージを寄せたリタ・ファモス氏(スイスプロテスタント教会議長、欧州プロテスタント教会共同体議長)は、同書を「日本とスイスの改革派教会を結ぶ大事な橋渡し」と評価し、出版への祝意を伝えた。

後半は松谷曄介(金城学院大学宗教主事)、森島豊(青山学院大学宗教主任)、渡辺祐子(東北学院大学教授)の3氏が登壇。昨今の中国の政治的・宗教的弾圧に触れながら「中国ではキリスト教を改造しようとしているが、中国のキリスト教はまさに改革されつつある」と話す松谷氏によれば、その渦中においてキリスト者がより本質について考察する機会が与えられているという。渡辺氏は地震の問題に注目し、「自然災害と人災は切り離せるものではない」と述べ、相互が誘因関係にある前提から二元論に陥るのではなく双方の理解を深めることに尽力する必要性を訴えた。

森島氏は、「キリスト教思想史に注目した場合、聖書の語る事柄とキリスト教会やキリスト教国は重なっているが本質を表しているわけではない」とした上で、高品質なオルガンを未経験者が演奏する場合を例に、弾き手が「これは低品質なオルガンだ」と自己絶対化するのではなく、自らの現在地を把握し「美しい音色を奏でる方法」を追求する自己相対化の視点が教会にも必要と主張。災禍において、教会は権力や社会通念へ即時に信頼するのではなく「まず聖書という楽譜」を見つめ直す営みが大切であると語った。

会の中では、日本キリスト教会東京中会から有志の教会合唱団による賛美も披露された。同研究所は新たな公開講座の企画は未定としているが、参加した関係者からは今後の展開を期待する声も寄せられている。

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