今日4月8日は桃井かおりの誕生日です。
1981年のテレビドラマ「ダウンタウン物語」では、貧乏牧師に恋するスナックの歌手兼ホステスを演じました。近所の子どもたちの面倒を見るお人好しの牧師は川谷拓三、その教区長が平田昭彦、牧師仲間が篠田三郎という配役でした。
脚本は市川森一。少年時代に日本基督教団・諫早(いさはや)教会で洗礼を受け、上京後、同・本郷中央教会に教会籍を移したものの、ずっと教会から遠ざかっていました。ところが晩年、自宅近くの同・麻布南部坂教会に転会し、礼拝にも出席するようになっていたといいます。
市川が18歳で上京するとき、「ディアスポラ(パレスチナから散らされていったユダヤ人のことで、彼らを通してキリスト教が広がっていった)として行きなさい」という言葉を贈ってくれた林田秀彦牧師(後に聖学院中学・高校の校長)にこのシナリオ本は献呈されています。
その教会はまことに貧しく、建物もおんぼろでしたが、二十代の若い牧師の周囲は、いつも明るい笑い声があふれ、歌声が流れ、敬虔(けいけん)な祈りの声に包まれていました。川谷拓三扮(ふん)する塩谷牧師の中に、私はたえず林田牧師のあの当時の姿を思い描いていました。(市川森一『ダウンタウン物語(後篇)』筑摩書房)