カトリックの教皇フランシスコは17日、バチカン(ローマ教皇庁)で前田万葉(まえだ・まんよう)枢機卿(すうききょう)と面会し、2019年の終わりごろに訪日し、被爆地の広島・長崎を訪問したいと述べたと、前田氏が明らかにした。この日の面会には、長崎大司教区の高見三明(たかみ・みつあき)大司教も同席した。1981年、当時のローマ教皇、ヨハネ・パウロ2世が日本に初めて訪問したが、教皇フランシスコの日本訪問が実現すれば38年ぶりとなる。
教皇は少年時代、日本で宣教活動をすることを希望していたが、感染症により右肺の一部を摘出する手術をしたことで断念したという経緯もあり、日本に対しては特別な思いを持っているとされる。これまでも日本訪問の意向を繰り返し口にしていた。
訪問の時期は調整中だが、長崎県内の関係者によると、11月ごろが濃厚だという。
それを受けて、広島県の湯崎英彦知事は18日の定例会見で次のように期待を述べた。「たいへんうれしい。核兵器廃絶への国際的機運を高める大きな力になると思う。(原爆死没者)慰霊碑の参拝や(平和記念)資料館の訪問などを通して、広島から平和のメッセージを世界に発信していただけたら素晴らしい」。湯崎知事は昨年5月、バチカンで教皇に親書を手渡し、訪問を要請していた。
また広島市の松井一実市長も、「核兵器廃絶を願う広島市の思いを世界で広く共有していただくためにも、法王(教皇)のこの地での発信は強烈なインパクトがある。非常にありがたい」と述べた。
教皇フランシスコは今年9月12日、バチカンで宮崎市の一般社団法人「天正遣欧使節顕彰会」の関係者と面会した時、「来年2019年、訪日を望んでいる」と初めて訪日の時期に言及した。
それを受けて、河野太郎外務大臣が先月23日、バチカンでポール・リチャード・ギャラガー・バチカン外務長官と会い、教皇の訪日実現に向けた協議を行うとともに、双方の大使館などを通じて引き続き緊密に協力しながら準備にあたっていくことを確認したばかり。
安倍晋三首相が2014年6月、バチカンで教皇と会談し、来日を要請。今年5月には田上富久・長崎市長が松井広島市長との連名で訪日を要望する親書を手渡していた。
前田氏は今年6月、新たに枢機卿に親任された。枢機卿は、カトリック教会における教皇の最高顧問で、教皇に次ぐ地位にある。日本人の枢機卿ポストは、白柳誠一枢機卿が2009年12月に帰天してから空席だったが、9年ぶりにそれが埋まった。また、日本から枢機卿が任命されるのは2003年の濱尾文郎枢機卿以来、約15年ぶり。