二転三転するトランプ米大統領の関税政策が世界経済に深刻な混乱をもたらしている。連日のニュースでは電子機器や食品の価格に焦点が当たりがちだが、宗教関係の製品の価格にも影響が出ると見込まれている。昨年11月の選挙ではプロテスタント福音派の強固な支持を受けて当選したトランプ大統領だが、今その関税政策がキリスト教界に思わぬ打撃を与えつつある。
米国版ニューズウィークは今月4日「ドナルド・トランプの関税は聖書をより高額にするだろう」と題する記事を掲載。米国内で一般的に使われている聖書の多くが中国で印刷され米国に輸入されたものであることに触れ、もし米国が対中関税を引き上げた場合、米国内で聖書の値上がりが起きる可能性を指摘。聖書は通常の書籍と異なり極めて薄い紙で印刷されるため、その特殊な技術をもつ工場の数が米国内には限られている。
また皮肉なことにトランプ氏公認版の聖書として知られる「トランプ・バイブル」(正式名は「米国に神の祝福あれ聖書」)の大半も中国で印刷され米国に輸入されているため、やはり値上がりが避けられない。共同通信の取材によると昨年1年間だけで実に12万部の「トランプ・バイブル」が中国・杭州の出版会社から米国に発送されているという。
聖書以外の宗教用品の高騰・品不足も懸念されている。「米国カトリック・レポーター」は14日、トランプ氏の「不確かな関税」が米国内のカトリックの礼拝用品の供給に与える影響を指摘。米国のカトリック教会の場合、聖餐用のワインや祭服の大半は国産だが、彫刻・絵画などの装飾品その他の小物類は中国産であることが多いという。また教会建築に使われる大理石も中国やヨーロッパからの輸入に依存している。そのためトランプ関税をめぐり、教会用品を扱う業者たちからは既に困惑や懸念の声が出ているという。
(木村 智)