日本基督教団・西条栄光教会(愛媛県西条市、古谷健司牧師)の67年前に建てられた牧師館(木造2階建て、延べ床面積141・59平方メートル、幅7・3メートル、奥行き11メートル)を保存するための改修工事が終わり、23、24両日に完成見学会が開かれる。
有名な建築家が手がけた貴重な「和洋折衷の近代モダニズム建築」(現在、国の登録有形文化財へ申請中)を後世に残そうというプロジェクトの第一弾。続いて、幼稚園園舎の再生保存も計画中だ。昨年5月に工事を開始し、耐震化対策をはじめ、建物を解体せずに移動する曳家(ひきや)作業など、大がかりな工事が行われてきた。従来の部材を可能な限り活用し、後に入れられたアルミサッシを木製に戻す一方、水回りの設備などは新しくした。
教会は、水堀で囲まれた旧西条藩陣屋跡の堀端に建っている。会堂や牧師館、西条栄光幼稚園園舎を設計したのは、岡山県倉敷の建築家、浦辺鎮太郎(うらべ・しずたろう、1909~91年)。
1909年、岡山に生まれた浦辺は、京都帝国大学建築学科を卒業後、倉敷レイヨン(現クラレ)に入社し、大原美術館分館を設計。62年、同社社長である大原総一郎(晩年、カトリックの洗礼を受けた。父親は大原孫三郎。石井十次の影響を受けて受洗し、日本基督教団・倉敷教会を設立した)の庇護(ひご)のもとに倉敷建築研究所(現・浦辺設計)を設立し、2年後、建築家として独立。大原の構想する倉敷の町づくりを支え、倉敷アイビースクエアなど、大原家や倉敷に関連する建築など、多くの作品を残している。この西条栄光教会は、倉敷レイヨン在職中の51年に設計したもの。
柳宗悦(やなぎ・むねよし)の感化を受けた民芸家で倉敷民藝館の初代館長、関西学院大学神学部を卒業した外村吉之助(とのむら・きちのすけ)の助言により、民芸風の様式に設計されている。また、当時では珍しい吹き抜け構造も取り入れられた。牧師の生活空間と信者との交流空間を兼ね備え、回遊性を持たせながら、互いの動線が交わらないよう、部屋などの配置も工夫されている。
西条栄光教会は初代牧師、戒能団平(かいのう・だんぺい。戒能信生氏は長男)によって設立された。48年から始まった西条倉レ聖書研究会を源流とし、翌年に初めての礼拝が倉レ択善寮で行われ、51年、現在地に会堂が完成した。