全国の教会や団体に年4回のダイレクトメール「はこぶね便」を発送してきたはこぶね便事務局(有限会社トップ・スペース)は3月、長期的視点に立ち、教会の〝今〟を支える宣教支援ツール「LIFT(リフト)」を立ち上げた。キリスト新聞社、いのちのことば社、カバレッジプロジェクト、日本宣教リサーチ、日本福音同盟(JEA)宣教委員会研究部門の6機関・団体が協働し、教会や宣教団体を情報面からサポートするための新たなプラットフォーム。「クリスチャン情報ブックWEB」や『キリスト教年鑑』に掲載されている公の教会情報を、簡単に更新できる仕組みを作る。
牽引する有限会社トップ・スペース代表の加藤信氏は、「長年、古い情報がそのまま掲載されていたり、まだ反映されていない開拓教会があるといった問題を少しでも解消し、正確な教会情報を共有することがねらい。このプラットフォームが厳しい時代を乗り越えようとする教会の、次の一歩を支える一助になることを願っています」と話す。
「はこぶね便」は、教会の閉鎖や合併を理由に毎年約100通が返送されている。教会を取り巻く環境がより厳しくなると予想される状況下で、将来に備えるために現状を正確に把握し、教会や宣教団体を情報面からサポートするための新たなプラットフォームが必要と考え、開発された。「LIFT」には、〝持ち上げる〟と同時に〝前へ進む〟というイメージが込められている。
今後は、段階的に教会・団体のニーズに応じて、さまざまな機能が順次拡充される予定。教会を探す人、地域宣教の現状を把握したい人に向けて、より確実で有益なデータを提供できるようになることが期待される。
調査一元化で宣教団体から期待の声
三重県下59のプロテスタント教会に聞き取りを行い、若者に関する統計を共有したカバレッジプロジェクト技術部門マネージャーの近藤健二氏(OM日本=Operation Mobilisation=宣教師)は、「三重宣教ネットワーク」として、宣教のために個々の教会が離れ小島のようになるのではなく、互いに協力する必要性を地道に訴えてきた。その成果は県全体の教会分布や教会未設置市町村を可視化する「祈りの地図」=写真下=や、昨年10月の「宣教フォーラムin三重」として結実し、現在も三重、和歌山、奈良の3県をつなぐ紀伊半島合同祈祷会の発足に向けて準備を進めている。「LIFT」の機能が充実することで、将来的に同様の取り組みを他県でも広げていくことができると期待を寄せる。
JEA宣教委員会研究部門の福井誠氏(日本バプテスト教会連合玉川キリスト教会牧師)は、2016年のデータをもとに全教会の位置情報をもとにオンライン上の地図を作成。2026年までに「LIFT」で最新の情報が精査できれば、この10年間における宣教の推移を把握し、今後の展望を見据えた協力が可能になると見ている。JEAが牧師や信徒の情報共有のために利用する「宣教協力プラットフォーム」とうまくすみ分けしながら、「教団・教派の運営管理の面で人材不足が進み、ある部門を一括して外部に委託するアウトソーシングが必要になった際にも、大いに役立つのではないか」と話す。
これまで、日本宣教リサーチ研究員としてデータブックを発行するなど、長年にわたりキリスト教全体の統計を集約し、分析する必要性を訴えてきた柴田初男氏は、「キリスト教界全体の現状を正しく認識した上で、各教団・教派が壁を超えて協力し合えるような宣教協力をいかに構築していけるかが、今後の日本宣教で最も重要。その上で、最新のデータベースを何のために、どう使っていくのか、教派を超えた議論が必要ではないか。『LIFT』がその契機になれば」と提起した。
「LIFT」では情報の取り扱いについて、一般に公開する情報と、教会内部(または教団や支援団体間)でのみ共有する非公開情報を明確に分けて管理できるよう、細心の注意を払うとしており、住所や連絡先など外部に向けて公開すべき情報を管理する一方、名簿や財務関連のデータは教会内部だけで閲覧できるように設定可能にする。
今後、以下の機能を段階的に実装することで、単なる情報更新ツールにとどまらず、教会運営と宣教活動を総合的にバックアップできるプラットフォームへと成長していくという。問い合わせは、はこぶね便事務局・有限会社トップ・スペース(info@liftsupport.jp)まで。
■統計・分析機能
地域ごとの出席状況や年齢構成などの教勢データをビッグデータ化し、地域の現状を客観的に把握できるようになる。これによって、地域宣教や教会間ネットワークづくりの具体的なきっかけを得られ、将来的な宣教戦略の策定にも役立つ見込み。
■宣教団体・教団本部との連携
教団本部や支援している各種宣教団体との情報共有をサポートし、現在FAXや郵送ベースで行われている作業の簡略化など、業務をより効率良く行うためのツールを提供する予定。
■教会活動管理
教会メンバーやスタッフ、各種活動を管理できる機能。日常的な運営作業の効率化が図られ、より多くの時間と労力を宣教活動そのものに注力できるようになることを目指す。
■新たなオンライン献金システム
インターネットを通じて、定期献金への対応や、一律の低額手数料で献金全額が教会・支援団体に届く仕組みを提案し、持続的な宣教活動を支える基盤づくりをサポート。