日本聖書協会(石田学理事長)主催による第3回「聖書エッセイコンテスト」(キリスト新聞社、カトリック新聞社、クリスチャン新聞協賛)の授賞式が1月25日、銀座・資生堂ビル「ワードホール」(東京都中央区)とオンラインをつないで開催され、引き続き選評委員となった林あまり氏(歌人、演劇評論家)と清涼院流水氏(作家、英訳者)による特別対談も行われた。司会は本紙編集長の松谷信司が務めた。
「聖書エッセイコンテスト」は2022年、聖書を愛読する一般の読者(信者以外を含む)とともに、キリスト教に親しみを覚えられるような新しい作品を発掘しようと「聖書ラノベ新人賞」とのコラボで始まった企画。今回は「聖書×旅」をテーマに、過去最多88作品の中から18作品がノミネートされた。
授賞式には、宮城、群馬、愛知、大阪、福岡など全国各地から受賞者が集い、家族とともに参加する姿も見られた。大賞、準大賞、佳作のほか、選評委員が選ぶ「あまり賞」「流水賞」に加え、今回から新たに「松谷賞」「日本聖書協会総主事賞」も表彰された。
大賞に選ばれたのは、こばやしきよさん=写真下=による「かばんの中の小さな聖書」。クリスチャンの母に育てられた筆者が、幼いころから親しんできた聖書を、結婚後、子どもが産まれてからは、旅に持参することがなくなったことを回顧。教会学校の教師をしながら、教会に連れて行っていた娘が、それまで無関心だった聖書に興味を示し、母親の聖書を読み始めるという体験を綴った。
「松谷賞」に選ばれたのは、朝霧翼さんの「初めての教会訪問はGPSゲームと共に」。「GPSを利用した位置情報アプリゲーム」をきっかけに、「『地点』にいるモンスターと戦う」目的で教会を訪れ、ボランティアに参加し、礼拝にも参加したという実体験を軽妙な筆致で描く。各地の宗教施設がゲームに組み込まれた当初、「聖域」が荒らされかねないと危惧する否定的な反応が大半を占める中、動機は何であれ少しでも接点になるのならとわずかな可能性に期待する声もあったが、実際にゲームが教会訪問の動機にもなり得ることを証明した。
授賞式後半の対談では、過去2回との違いやそれぞれの受賞作を選んだ理由、聖書と旅にまつわるエピソードなどが語られた。特に、今回のコンテストで初めて文章にまとめた、あるいは作品を応募したという受賞者も多かったこと、応募作の多くがクリスチャンではない非信徒によるものであることから、世代を超えて広く読まれてきた聖書の持つ可能性と、コンテストの意義について再確認する機会となった。
全受賞作と選評コメントは、日本聖書協会の特設サイト(https://bit.ly/4gqxO3x)で閲覧可能。