山梨英和大学 卒業生有志が声明「あらゆる差別とハラスメントを許さない」

本紙4月11日付に「『奉仕』という名の強要と欺瞞 私があるキリスト教学校の職場を去った理由」と題する寄稿が掲載されて8カ月。執筆者である洪伊杓(ほん・いぴょ)氏が宗教主任として勤務していた山梨英和大学(朴憲郁学長)が、「前宗教主任のキリスト新聞への寄稿について」と題する文書を学内に掲示してから5カ月。この間、4度にわたり「意見文」を提出、公開してきた卒業生有志一同は12月1日、「山梨英和大学の果たされない説明責任に対する声明文」を発表した。

【特別寄稿】 「奉仕」という名の強要と欺瞞 私があるキリスト教学校の職場を去った理由 洪 伊杓 2024年4月11日

声明は、7月8日に経緯を説明する掲示が学内に張り出された後も沈黙を続ける大学側に対し、「本件が報道されて以降、保護者にも外部にも一切説明がされていません。卒業生や外部は情報を得ることができず、在学生からの情報提供により大学の取った醜悪な対応を知りました」と非難。「聞かなければ、見なかったことにすれば、本件は最初から何もなかったことにできるなどという魂胆があるのでは、と思われても仕方がありません。学生と教職員が尊重され、より良い就学環境として成長し続ける健全な研究機関であって欲しい。これは至極当然な願い」「今の大学は、あらゆる世代の山梨英和大学関係者の顔に泥を塗り、地域にも汚名を轟かせ続けています」とした上で、「前宗教主任がおっしゃったように『言語による人種、民族差別、年齢による世代差別、地域差別』、その他あらゆる差別とハラスメントを私たちは許さない」と宣言している。

声明の全文は以下の通り。


山梨英和大学の果たされない説明責任に対する声明文

私たちは、山梨英和大学に意見文を届け続けている有志一同です。私たちは、山梨英和大学の杜撰かつ説明責任を果たさない隠蔽体質に改善を要求し続けています。この声明文は、私たちの声が大学に無視され続けており、改善の見込みがないため、キリスト新聞に掲載を依頼しました。

2024年4月11日、キリスト新聞(以下、Kirishin)にて山梨英和大学前宗教主任より「『奉仕』という名の強要と欺瞞 私があるキリスト教学校の職場を去った理由」が掲載され、大学内でパワーハラスメントが生じていることが明らかになりました。在学生および卒業生は本文を読み、卒業生が主体となり説明責任を求める意見文を募り、大学に提出しました。しかし、当該記事が掲載されて以降、現在まで4度に渡り意見文を送りましたが、現在も大学は対応をせず沈黙をずっと貫いています。

7月2日にKirishinがXにて「大学の全教職員、法人の全職員を対象に緊急説明会を開く。本紙による告発文の掲載以降、学生らによる多数の投書と説明要求を受けて『合意形成が必要』と判断したもの」と報道しました。この報道によって、意見文を書いた学生たちはようやく説明がされると安堵しました。しかし説明とは、キャンパス内の掲示板に張り紙が1枚貼られただけで、ホームページや学内ポータルには一切の説明がありませんでした。これは3度目の意見文で「本文書が教職員内で共有されてもなお、大学がこの件に関して説明しなかった場合、メディアへの公表を検討します。公表内容は、学生から多くの意見文が寄せられていることと、意見文が無視され大学から公的な説明が一度もされていないことの2点です」と明記したがための対応だと思われます。あまりにも不誠実ではないでしょうか。

また、張り紙では「調査が進行中のため」と対応が遅れたことを明記していますが、この張り紙以降、何も説明がないため、何を調査しているのか、現在も調査中なのか、不明瞭なままです。また、本文の結びに「山梨英和大学では公正、適切、かつ健全な大学運営を行い不十分な点については改善を進めています。この点については、どうか信頼していただきたいと思います」と明記されていました。これまで私たちは、200の意見文を集約し、大学へ繰り返し声を届けていますが、一切が無視されています。組織の自発的な説明がなく、対応も遅れ、学生の声が無視され、執行部が権威的な大学の、一体何を信頼すれば良いのでしょうか。私たちは大学に対し一切の信頼を失いました。

私たちが非常に憤っているのは、ハラスメントの実態はもちろんですが、それよりも、ずっと沈黙を貫けばすべてをなかったことにできると思っている大学組織の卑劣な態度です。なぜ、在学生は質の高い教育の機会を奪われ、不安の中ハラスメントの疑いがあるキャンパスで授業を受けなければいけないのでしょうか。論文を書いていない教員がなぜ大学で教鞭を振るうことができるのか。本件が報道されて以降、保護者にも外部にも一切説明がされていません。卒業生や外部は情報を得ることができず、在学生からの情報提供により大学の取った醜悪な対応を知りました。

あの張り紙は、意見文の要求に従い外部へのリークを恐れて出した「形式的な」説明にすぎないのです。潜むのは説明を出したのだから黙って従えという巨悪の声です。大学の欺瞞に満ちたパフォーマンスによって本件が解決すると騙された学生は少なくないでしょう。つまり、私たちの切実な声を潰したいのです。聞かなければ、見なかったことにすれば、本件は最初から何もなかったことにできるなどという魂胆があるのでは、と思われても仕方がありません。学生と教職員が尊重され、より良い就学環境として成長し続ける健全な研究機関であって欲しい。これは至極当然な願いです。今の大学は、あらゆる世代の山梨英和大学関係者の顔に泥を塗り、地域にも汚名を轟かせ続けています。

山梨英和大学で起きている問題は日本社会の縮図でもあります。人を人とも思わない態度には「人権」の軽視が現れており、目先の利益だけを追求し、自分らの世代が潤沢でいればそれで良しとする傲慢で浅はかな考えのもとに起きています。

山梨英和学院は創立当時、キリスト教や西洋人に対する偏見と差別に遭いながらも、キリストの精神を山梨に育み続けました。なぜ、教員が職場で差別を受け学校を去らざるを得なかったのでしょうか。ここで報道され続けている問題は歴史に刻まれる汚名であると同時に、後世まで語り継がなければならない学生の勇気ある抵抗の歴史です。

私たちの行動や原動力は、他人を自分のように愛おしむ「隣人愛」です。それは、人として当然の考えであり、キリスト教信者でなくとも人として生きていく上で必要な優しさです。他者の怒りや屈辱に共感し、押しつぶされても声を上げ続けなければ、欺瞞に満ちた世界になってしまいます。

最後に、このような大学問題の渦中で卒業されていく愛しい後輩たちに申し訳ない思いでいっぱいです。後輩たちの学位記に刻まれる加害者の名前を私たちだけでは取り除くことができません。また、これから入学を検討している高校生の皆さん、オープンキャンパスで大学に来てくれた高校生やその保護者の方々に申し訳ないです。誰かひとりでも、私たちが抵抗していることを覚えてください。

なお、私たちが届け続けたすべての意見文の個人情報に関しては「山梨英和大学における個人情報保護方針」に則り、投書した個人が特定されることはないよう、徹底した管理を願います。それはこの声明文も同様です。個人情報について適切な安全措置、管理に努め、情報への不正アクセス、漏えい、滅失、き損のないよう、また、個人情報を厳正な管理下で保管してください。大学はこれらの意見文や投稿者について在学生・卒業生への個人聴き取り等は決して行わないようにしてください。

前宗教主任がおっしゃったように「言語による人種、民族差別、年齢による世代差別、地域差別」、その他あらゆる差別とハラスメントを私たちは許さない。

2024年12月1日

山梨英和大学 卒業生有志一同

【速報】山梨英和大学 本紙「寄稿」受け学生向けに初めて見解 2024年7月9日

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