礼拝出席30人以下の教会が過半数
「キリスト教シンパ層」の存在を明記
東京基督教大学(TCU)国際宣教センター日本宣教リサーチ(山口陽一代表)が5月末、3冊目となるデータブック「神の国の広がりと深化のために――データから見る日本の教会の現状と課題」を発行した。9月に予定されている第7回日本伝道会議(JCE7)に向けて、日本宣教リサーチ研究員である柴田初男氏が、『キリスト教年鑑』や『日基教団年鑑』などの統計をさまざまな角度から分析、評価して編集したもの。
各都道府県別の教勢データ、カトリック、他宗教との比較、教職者育成の現状と課題、在留外国人や在外邦人の教会、来日宣教師の現状など、国内宣教を進める上で必要な最新の情報が多数収録されている。
発行人である代表の山口氏(TCU学長)は「はじめに」で、「日本の教会は、教勢データから見るかぎり、『停滞』を通り越して『衰退』に入っています。認めたくないことではなりますが、この現実を直視することなしに展望は開けません」と指摘。
この間の趨勢を概観しつつ、「戦後の教会は、さまざまな課題を抱えながらも敗戦から立ち上がり、経済成長の日本において、数と質において『成長』し、戦後50年ごろにピークを迎えました。その後の30年は、日本社会の停滞、ポストモダンと歴史修正主義、グローバル化とIT革命などに特徴づけられます。教会においては教勢の成長点が移動し、聖霊派やグローバルな教会、韓国系をはじめ在日外国人の教会の伸長、その一方で都市部と地方の教会の格差、少子化と信徒の高齢化、価値観の多様化による一致の難しさが進みました。そのあたりで足踏みしているところをコロナ禍に襲われたのです」と記している。
同書の分析によると、全国の教派別兼牧(牧師が複数の教会を兼任している)率が最も高いのは日本聖公会で35.8%、次いで日本福音ルーテル教会(35.1%)、日本キリスト改革派教会(23.9%)となっており、日本基督教団は11.9%。
牧師の平均年齢(全国)は62.2歳。「今後10年後を見た時、現在75歳を超える約15%の教職の方が引退する可能性が大きい。現在、35歳以下の教職者は3.5%なので、今後10年間に同様の比率であるとすれば、その差の約11.5%(1104人)の教職者が減少することになり、教職者不足が発生する恐れがある」と解説している。
教団・教派別教会数(2020年)ランキングでは、1666の日基教団を筆頭に、日本バプテスト連盟(318)、日本聖公会(309)、日本同盟基督教団(261)、日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団(217)、日本福音キリスト教会連合(197)、日本ホーリネス教団(151)と続く。以下はいずれも150以下。
加盟団体別に見ると、日本キリスト教協議会(NCC)加盟が2600(33%)、日本福音同盟(JEA)加盟が2080(26%)、日本ペンテコステ・ネットワーク(JPN)加盟が430(5%)教会あり、その他が2800(36%)となっている。
礼拝出席者数の分布については、2020年度の主要なプロテスタント教団・教派の平均値を比較すると、日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団(55.2人)、日本福音キリスト教会連合(40.2人)、日本イエス・キリスト教団(39.6人)、日本同盟基督教団(36.9人)、日本バプテスト連盟(30.5人)の順となっている。日本基督教団は22.2人、最も少ない日本聖公会は15.8人。「礼拝者数が15人以下の教会が28.7%、30人以下の教会が60.9%となり、全国の半数以上の教会の礼拝者数が30人以下であり、15~20人の教会の数が最も多い」
都道府県別プロテスタント教会未設置市町村数は、上位から北海道(85)、長野(39)、福島(31)、熊本(23)、青森(20)。最下位は香川で0。都道府県別プロテスタント教会礼拝者数の対人口比は、上位から沖縄、東京(0.4%)、兵庫(0.29%)、大阪(0.25%)、京都(0.24%)。最下位は佐賀で0.06%となっている。
今回、新たに設けた「キリスト教シンパ層の存在」と題する項目では、キリスト教系学校の学生・卒業生や聖書の読者、キリスト教社会福祉事業所の関係者、クリスチャン作家の読者など、「現実的に教会に繋がっていたりしなくとも、キリスト教に対して好意的な人」が「30%以上」いると見なし得る根拠としていくつかのデータを例示している。
さらに、岡本亮輔『宗教と日本人』(中央公論新社)の分析を手がかりに、「教会に所属はしないがキリスト教に愛着や親近感を持ち、個人的には信仰を持ちつつも組織的な所属をしない人々」を「所属なき信仰」と規定し、それらの人々を招き入れ「神の国の深化」をもたらすために、「宗教心が薄い一般の未信者層向け伝道や未伝地伝道の方法だけでなく、IT技術やメディア・コンテンツ等を活用した『橋を架け、繋がる』伝道方法を有効に活用することが必要ではないか」と提起している。
編著者である柴田氏も、この間の最も大きな変化として「所属なき信仰者、所属なき教会(単立・グループ)の増加によって教団・教派の弱体化が見られ、キリスト教会全体の教勢の衰退及び教会の無牧化がさらに進んでいる」と指摘する。
また2017年以来、日本宣教リサーチが提唱してきた「宣教戦略策定支援Mappingシステム(MSSMS)」についても、「各教団・教派や宣教団体、キリスト教系学校等が互いの壁を越えて連携を深め、宣教協力を密にするために必要と思われる情報やデータ等を提供する『キリスト教データセンター』」の設立と、「互いに情報やデータを共有化し、日本全体の宣教戦略を考えるような『シンクタンク』的な機能」を構築する必要性についてもデータブック内で詳述している。
「あとがき」では、「全国的なデータの入手が困難な状況にあり、継続的な統計処理が難しくなることが予想されるため、今後このような印刷版の『データブック』を出版するのは難しくなるのではないか」とした上で、「キリスト教界全体に関わる問題として、JEA等を中心に対策を考えていただきたい」と訴えている。
なお、同書の作成にあたっては、当初、JEA宣教研究部門との共同作成を企図していたものの、編集方針などをめぐり相違があったため別個に『宣教ガイド』が出版される予定だという。
データブックは1800円(+税)で頒布中(送料は実費負担)。購入の申し込みは専用フォーム(https://bit.ly/44vdWqh)から。代金は同封の振込用紙を利用、またはメールで指定の振込先まで。問い合わせは日本宣教リサーチ(Tel 0476―31―5522)まで。
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