主よ、なぜ遠く離れて立ち、苦難の時に隠れておられるのか。
詩編10編1節(参考箇所詩編10編1〜18節)
10編は9編と並んで、乏しい人、貧しい人、虐げられている人が取り上げられているので貧しい人の詩編とも言われます。
人が貧しさや乏しさの中で生きねばならないとき、あたかも周囲はこれでもかこれでもかとまるで傷口に塩を擦り込むかのように見えます(8〜10節)。苦難のどん底に沈み込むとき、神はどこにもおいでにならないかのように見えます。詩編の作者は「主よ、なぜ遠く離れて立ち、苦難の時に隠れておられるのか」と神に向かって恨み言を言うのです。絶望の極みに立つ今、この境遇から救い出してくれるお方であるはずの神をどこにも見つけることはできません。周囲を見れば、神に逆らっている人間の方が思うままに生きているかのように見えます(3節)。
しかしこの詩編作者は、神は遠くにおいでになるかのようであり、この苦しみの中にいるわたしから隠れておいでになるかのように見えると言いつつ、その絶望の思いを神に向かって告白しているのです。「神よ、あなたはおいでにならない」と神に告白できる信仰を彼は持ち得ていることこそ、信仰の不思議と言わねばならないでしょう。