今日9月5日は『聖書 新共同訳』が発刊された日。1987年、今から32年前のことです。そして昨年末、プロテスタント主流派や福音派、カトリックなどキリスト教の諸教会が協力して、「新共同訳」に代わる新しい礼拝用聖書「聖書協会共同訳」が発刊されました。
日本語訳聖書は個人訳も含めてさまざまなものがありますが、日本で最初の礼拝用聖書は「文語訳」です。個人で読むのではなく、プロテスタント教会で毎週日曜日に礼拝で読まれるため、米国や英国の聖書協会の資金援助により、ヘボンやブラウンなどの宣教師が1880年に「新約」、87年に「旧約」を完成させ、出版しました。
それから30年を経た1917年、新約だけ「大正改訳」として出版されました。これと「明治元訳」の旧約を合わせたものが現在も「文語訳」として出版されています。この「文語訳」は教会外でも広く読まれ、美しい日本語として高く評価され、文学作品などで引用されるのもこの「文語訳」が多いといわれています。新約に続いて旧約の改訳作業も進められましたが、50年、「口語訳」を出すことが決まり、その全訳が55年に公刊されました。
その後、福音派教会により1970年、「新改訳」が出されました。その「新改訳」は2003年に第3版として部分的に改訂し、17年に全面改定の「新改訳2017」が発刊されました。
「新共同訳」が出版される9年前の1978年、「新約聖書 共同訳」が完成しましたが、途中で翻訳方針が変更され、広く使われることはありませんでした。「共同訳」は、日本の99%の非キリスト者を対象に意訳を中心とした翻訳方針で進められたのですが、やはり教会での使用に堪(た)えるものであるべきだと、原典に忠実な翻訳方針に変わったのです。
そうして完成したのが「新共同訳」でした。この1987年は、日本語の最初の聖書「ギュツラフ訳」から数えて150年、「明治元訳」出版からちょうど100年目でした。
しかも「新共同訳」は、プロテスタントとカトリックが共に礼拝とミサで使う初めての聖書となりました。第2バチカン公会議(1962~65年)後の68年、聖書協会世界連盟(UBS)とカトリックの間で協議が成立し、プロテスタントとカトリックが同じ聖書を用いるための聖書翻訳の「標準原則」がまとめられ、世界各国でカトリック・プロテスタント共同翻訳が開始されたのです。
今後も聖書学の進展と諸教会のよりいっそうの協力により、さらに原典に忠実な美しい日本語の聖書へと洗練されていくでしょう。1987年9月5日はその一里塚だったのです。