「VTJ旧約聖書注解」「NTJ新約聖書注解」の第3回配本『NTJ新約聖書注解 ルカ福音書1章~9章50節』(日本キリスト教団出版局)が4月に刊行された。『ルカ』は全3巻で、第2巻(9:51~19:27)は2025年の刊行を目指す。
「VTJ/NTJ」の大きな特徴は、日本語で考える現役の研究者が書き下ろすので、翻訳と違って分かりやすいことだ。
これまで注解書といえば翻訳物が多く、日本人によるものは『新共同訳聖書注解』(旧約全3巻、新約全2巻。日本キリスト教団出版局)や『新聖書注解』(新約全3巻、旧約全4巻、いのちのことば社)などはあったが、半世紀前に書かれたものもあり、そういう意味で待望の日本発の注解書が誕生したことになる。
またこの注解書では、浅野淳博氏(ガラテヤ)や遠藤勝信氏(黙示録)など福音派からも参加しており、教派にとらわれない執筆陣となっている。提示される聖書本文も、著者による翻訳である点も注目されるところ。
『ルカ福音書』の執筆者は嶺重淑(みねしげ・きよし)氏。1962年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業(史学科西洋史学専修)、関西学院大学神学部卒業、同大大学院神学研究科博士課程前期課程修了、同後期課程単位取得退学(新約聖書学)、スイス・ベルン大学プロテスタント神学部にて神学博士号(Dr.theol.)取得。日本基督教団・泉北栂(せんぼくとが)教会担任教師、関西学院大学神学部教員を経て、現在、同大人間福祉学部教授・宗教主事、ウイリアムス神学館非常勤講師。
食事の席でイエスの足を涙で濡らし、髪の毛でぬぐった後、香油を塗るという有名な「罪深い女性の赦(ゆる)し」(7:36~50)のエピソード。その「解説/考察」で、嶺重氏はこう述べている。
「おそらくルカは、愛と赦しの関係を双方向的に捉えており、その女性の愛の業には赦しの根拠とその結果の双方が含意されているのであろう。……恵みによって与えられた赦しは愛の業へと具現化されるが、この愛の業を通して赦しがさらに確かなものとされるのであり、赦しと愛は相互に作用を及ぼし合う。このような理解をさらに推し進めるなら、人を赦しへと導く愛の行為そのものが、罪の赦(ゆる)しの自覚から生じる信仰に根差しているという理解も可能であり、ルカは赦しと愛との関係を《赦し→信仰(→愛)→赦し……》というように循環的に捉えており、両者間の方向性は最終的には重要でなかったと見なすことも可能であろう」(340~341頁)
VTJ/NTJは全83巻(旧約聖書48巻、新約聖書35巻)を予定しており、すでに第1回配本『ガラテヤ書簡』(浅野淳博著)が昨年10月、第2回配本『出エジプト記1〜18章』(鈴木佳秀著)が11月に刊行されている。今後、年4冊前後を出し、20年後の完結を目指す。
この本の刊行を記念してNTJ講演会(主催:日本キリスト教団出版局、神戸キリスト教書店)が17日(月・祝)午後2時から4時半、神戸の日本基督教団・主恩教会(神戸市灘区原田通1-3-11)で開かれる。入場無料、申し込み不要。
第1部は著者の嶺重氏の講演「貧しい者への福音──ルカ福音書の中心的使信」。「ルカ福音書は、『貧しい者』(極貧者)に対する幸いの言葉(ルカ6章20節)に代表されるように、しばしば貧しい人々を肯定的に描いています。ルカは彼らをどのような存在として捉え、また私たちに何を訴えようとしているのでしょうか。このような問いを念頭に、ルカのメッセージの中心内容を読み解いていきます」
第2部は山崎英穂(やまざき・ひでお)氏(主恩教会牧師)と嶺重氏の対談。「『マニフィカート』とも呼ばれ、古くから教会が愛してきた『マリアの賛歌』(ルカ1章46節以下)。主イエスの誕生を控えたマリアが歌ったこの賛歌から、現代日本に生きる私たちは、どのようなメッセージを聴き取ることができるでしょうか。アドヴェントの説教テキストでもありますから、『一足早い』準備にもなりましょう」
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嶺重淑著
『NTJ新約聖書注解 ルカ福音書1章〜9章50節』
日本キリスト教団出版局
2018年4月25日初版発行
A5判上製・490頁
通常価格5200円(税別)
シリーズ刊行開始記念特価4400円(税別、2018年9月30日まで)