ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ、小西孝蔵理事長)は6月17日、中東向けのアラビア語放送を中心に、海外向け国際放送に長く携わった元NHK報道局ディレクターの飯野真理子氏を招き、オンラインイベント「シリア危機10年:出会った人々の願いをチカラに変えて」を開催した。飯野氏は、2000年にシリアに留学。2019年にシリア出身のパラリンピアンなど、難民のアスリートに焦点を当てるドキュメンタリーを制作した。
イベントでは、WVJ事務局長の木内真理子氏が聞き手となり、経済的にも文化的にも豊かだった危機前のシリアが、10年を超える紛争でどのように変わってしまったか、さまざまな分断によって国内外に散らされてしまった難民の置かれている窮状について報告された。
飯野氏はこれまでの取材経験から、「一番の願いは6人の子どもたちが夢をかなえること。私たちの時代のような戦争や対立ではなく、子どもたちにはシンプルで幸せな暮らしを」と願う母親のつぶやきや、内戦で右足を失いながらリオデジャネイロのパラリンピックに難民選手団の1人として出場したシリア出身のイブラヒム・フセイン選手の、「難民が目標を実現することで、希望を打ち砕かれたままの難民に希望を与えられる。障害を持つ難民が苦しみや絶望から抜け出せるように力になりたい」という言葉を紹介した。
また、「アラブの春」と同じ2011年3月に起きた東日本大震災の被災者に向けてシリアから送られた日本へのメッセージにも触れながら、私たちにできることとして、「声を上げること」「文化・芸術を知ること」「次世代のことを考える」「交流の機会を持つこと」などを挙げた。
シリア関連の企画で出会った若者が、以前は中東情勢にまったく関心はなかったものの、オンラインゲームで仲良くなった友人がたまたまシリア人だったことで関心を持ったという逸話も紹介し、「小さなことからでも友情を築くことが平和への第一歩」と強調した。
同イベントは海外からも含め100人を超える参加者が視聴。WVJでは特設ページ(https://bit.ly/3yvQs4E)から「難民支援のための募金」を呼び掛けている。問い合わせは同事務局(Tel 0120-465-009)まで。